
キャリアデザインの基本は、自己理解を深めることです。その手段としてキャリアアンカーは有名。アンカーとは錨のことで、仕事をすることで何を得たいのか、いわゆる職業観が明確になります。私のアンカーは、専門・職能別能力(TF) と、奉仕・社会貢献(SV) の二つで、ほぼ同得点(ココ)。「自分が得意としている専門分野や職能分野での能力発揮に満足感を覚え」、「何らかの形で世の中をもっとよくしたいという欲求に基づいてキャリアを選択する」人なのです。
私はその特性に関する解説を読み、深く納得しました。これまでのキャリアは、その職業観に沿って選択してきたものに他ならないからです。それと同時に「これは変える必要もないし、今後も大切にしていけばいいのだ」と強く認識しました。それ故、「技術者出身という専門性を活かしたキャリアコンサルティングを行い、働く人たちのウェルビーイングを支援する」という”自分軸”を定めました。
しかしながら、専門能力はどんどん陳腐化するし、私が「こうすれば世の中きっと良くなる」と掲げた戦略も、そう簡単に世に受け入れられるものではありません。社会情勢により求められる人事施策は日々変化しますし、景気が悪くなったとき多くの企業で真っ先に抑制されるのは人材育成費。費用対効果が見えにくいものは後回しにされるのです。
これは「それまでの仕事のやり方を続けていても成果や影響力の発揮につながらないという自身の限界についての認知」そのものであり、私にとっては限界認知経験に他なりません1。猛烈な時代変化が、個人事業主である私にアンラーニング(学習棄却)を強いているのです。専門・職能別能力を大切にするのはヨシとして、その能力は常にアップデートする必要があります。

人生という航海をする上で錨を明確にすることは大切ですが、それを完全に下ろしてしまったら、船は動けず嵐の中で沈没してしまうかもしれません。錨の姿を確認できたのなら、それを巻き上げ、嵐を避けて進むことも必要になるでしょう。小さな舟なら尚更です。

昨今は、朝起きると昨日までの状況が一変してしまっていますよね。「自己を知りつつ自己にとらわれない」ようにしたいと、日々自問自答しています。□
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