先の記事では、相談者の内的世界に浸かる必要性について述べました。
但し、苦くて黒いコーヒーの海に浸かることには、恐怖が伴います。
「一緒に溺れてしまったらどうしよう…」
そう考えるのは当然のことです。
そんな時は、どのように対応したらよいのか考えてみました。
コーヒーの海にどっぷり浸かる
カウンセリングのプロセスにおいて、本当の問題をつかむには、相談者の内面世界に浸かる必要があります。國分康孝先生は、その様子をコーヒーカップになぞらえました。カウンセラーは相談者の経験を再現しながら、共にその世界を見るのです。

(出典:國分康孝、「カウンセリングの原理」、
誠信書房(1996) p.127)
相談者は、自己概念を揺らがした経験を再び見ることになりますので、少なからず動揺します。「カウンセリングの場には、ティッシュ箱を用意しておきましょう!」と言われますが、経験の再現をする過程で泣いてしまう相談者もおられるのです。

私はそこまでのカウンセリングが出来たことはありませんが、先輩キャリコンは体験したことがあるそうです。それは相談者がカウンセラーに心を許した瞬間であって、カウンセラーが傍にいたからこそ、再現できた経験と言えるでしょう。その方は「そのとき初めて、本当のカウンセリングが出来たような気がした」と語っていました。
一緒に溺れてしまわない
さて、このような状態になったとき、カウンセラーはどう対応すべきでしょうか? 一緒にコーヒーの海に溺れてしまったら、相談者を助けることは出来ません。際どい場面に向き合いながらも、相談者自らが泳ぎ出すことを促さなければなりません。内的世界で気付きを得たなら、外的世界に戻らねばならないのです。これはとても骨の折れるプロセスです。
「キャリアコンサルタントは心理職ではないので、そこまで深入りすべきではない」と言う方もおられます。直ぐにリファーするか、手っ取り早く解決策を提示して帰ってもらえと… しかし、だからと言って、相談者だけコーヒーの海に入ってもらい、キャリアコンサルタントは船の上に居れば良いのでしょうか? 安全な船の上から、具体的解決手段という浮き輪を海に投げ入れれば良いのでしょうか?

キャリアコンサルタントを訪ねる相談者は、少なからず気持ちが沈んでいます。いけいけドンドンで転職を志すような方は、ここに来ないでしょう。ならば、一緒にコーヒーの海に浸かる覚悟が必要ですよね1。それに耐えられるメンタルの強さを持ち、相談者自ら抜け出してもらえるような関わり方をしたいと、私は考えています。それが”キャリアコンサルタントの専門性”だと思うからです。
- 仏教では、これを和泥合水(わでいがっすい)といいます。「わが身を顧みずに、全力で他人を救うこと。泥まみれになり水に濡れながらも、溺れている人を助けるという意味の仏教語(四文字熟語辞典)」なのです。 ↩︎


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