オキシトシン的プレゼンテーション ~他者とつながり仕事を楽しむ~

今ここをよく生きよう
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私は元機械技術者です。さまざまな装置を開発し、開発過程で生じる技術課題を解決し、それらを報告書にまとめ、社内で発表してきました。あいにく社外秘の内容が多く、学会など社外発表出来る機会は極めて少なかったのですが、その内容をプレゼンテーションするときは大変誇らしい気持ちになりました。多くの技術者はそれをモチベーションとして研究開発を行っていると言っても過言ではないでしょう。

さて、そんな技術課題を解決したときのプレゼンは…

  • こういう目的で、こういう機能を持った装置を開発した
  • 但し、この機能を実現するためには、こんな技術課題がある
  • こんなユニークな考え方や手法を使って課題を解決した
  • 学術的にはこんな価値がある、工業的にはこんな価値がある

と示し、「どうだ、すごいでしょ?」とやる訳です。たとえ聴講者の人から、「こういう観点で見ると、どうなんでしょ? その考え方は正しいのでしょうか?」と問われたならば、「それについては、このような証拠がある!」と論破します。如何に論理的か? 多角的な観点から実証したか? が重要であると考えます。

今考えると、このような技術プレゼンは「ドーパミン的幸せ」、すなわち達成欲を満たすための場であったと思います。学会において、有識者から称賛を受けるようなことがあれば、ダバダバとドーパミンが出ます。私も学生時代、著名な先生からお褒めの言葉をいただいたときは、この世の幸せを感じました。

十数年前、私は企画部門に移り、新しい企画や戦略の提案をすることになりました。これらは正解がなく、皆さんに企画の内容を賛同いただき、その企画を実行に移すことが目的です。求められるのは、技術的な確からしさではなく、「そこに大儀はあるか」、「うれしいか?」という点です。以前「問題解決思考を抑えるために」で書いた通り、知情意の観点がバランスよく訴求されていなくてはなりません。

そうやって実施したプレゼンによって企画が前に進むことは、「オキシトシン的幸せ」と言えるでしょう。利害関係者(ステークホルダー)との”つながり”を感じられるからです。他人に自身のやりたいことを説明し、理解してもらえ、その実現に向けて協力・賛同してくれるとなったとき、感じるのは”愛”でしょう。

私は各種のプレゼンを行う中で、いつしか「オキシトシン的幸せ」を求めるようになっていました。特に今担当しているキャリア研修のプレゼンは、正解などない世界ですから「ドーパミン的幸せ」を求めても仕方がありません。「俺の言うことは正しい。言うことを聞け!」と聴講者を屈服させればドーパミンは出るかもしれませんが、それは研修の目的にそぐわないのです。受講生に共感を呼び、彼らの行動が変わったとき、他者とのつながりを感じてオキシトシンが出る。

出典:樺沢紫苑、ストレスフリー超大全、p.336

この図は、精神科医の樺沢紫苑先生が提唱しておられる「人生の3つの幸福」ですが、心と体の健康が保たれた状態で、オキシトシン的幸福感が得られれば、ドーパミン的幸福はほどほどで良い。なぜならドーパミン的幸せは一過性であり、中毒性もあるからです。

「オキシトシン的プレゼンテーション」をすると、他者とつながり、仕事が楽しくなると、私は思います。□

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