企業に勤める研究開発職の方は、自身の存在意義を以下のように捉えているのではないでしょうか?
- この技術領域における社内の第一人者は自分である。
- 私の開発した技術が、当社製品のコアとなっている。
- これまで沢山の技術レポートを残してきた。この通りにやれば再現は出来るが、実際には明文化出来ないノウハウがある。
- これまでの経験の中で培ってきたノウハウこそが私の財産であり、この会社における、私の存在意義である。
このように言い切れることは、とても素晴らしいことですね。私は新しい装置の開発を手掛けてきましたが、製品として世に出したものはごく僅かであり、その多くは日の目を見ることがありませんでした。早期退職する際に、自身が管理する古い資料を大量に廃棄したのですが、苦労して取った実験データのファイルを見るにつけ、頭の中には中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が流れていました(泣)。
従来の技術が陳腐化することは避けられず、常に新しい技術に取組まないと、職場における自身の存在意義さえ怪しくなっていきます。これは研究開発職に限ったことではなく、マネジメント職や企画職に転じた場合でも同様であり、職種・職位に応じた新しいスキルを身に付けなければ、生きてはいけません。常にリスキリングが求められているのです。
さてミドルシニアがセカンドキャリアを考える際、その方向性を、Will-Can-Mustのフレームワークを使って整理すると以下のようになるでしょう。
- Can(出来ること)が減らないように、今まで以上に努力する。既存領域を強化するか、新領域を開拓する。あくまでも、”出来ること=価値あること”の価値観を貫く。研究開発職では、企業でのCanを強化して、大学などの研究機関に転身する方もおられます。
- Must(求められること)が異なる、違う職位・職種(役割)に鞍替えする。例えば、研究の第一線からは退いて、後進の指導に特化するなど。ポータブルスキル(業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力)を明確にし、キャリアチェンジを図ることは、「Canを活かしながらMustを変える」ことだと言えるでしょう。
- Will(夢)を見直す。①Mustを変えることに伴い、Willも変える、②本業でWillを求めることを諦め、副業でWillを実現したり、プライベートでのWillに切替える。「自分で技術を開発する」から「部下の技術開発を支える」というのは、立派な夢の転換です。
- Will-Can-Mustの何も変えず、ひたすら停められる年”まで働く。仕事でWill-Can-Mustを満たすという考え方自体を捨てるという選択肢もあります。
このように、技術職は”Can”の枠から、そのバランスが崩れていくため、何れかの枠を調整せざるを得ないのです。”出来ること=価値あること”という価値観に縛られていると、だんだん厳しくなっていくことは否めません。doing(行い)からbeing(在り方)へ価値観をシフトしていくことが、セカンドキャリアを考える際にとても重要。私が「技術者のWell-beingとは何か?」を問い続けているのは、そのような理由からです。同世代の皆さま、ぜひお話ししましょう。ライフキャリア相談室でお待ちしております。□
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