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  3. 解決策が無い話を聴く ~役に立たないことを恐れなくていい~

前職にてキャリア面談の仕方について理解活動をしていたときのことです。あるリーダーが不安な顔をしています。お話しを聴いてみると…

  • 若いうちからキャリアについて考えることの必要性は理解した。自分もこの年になるまでキャリアを考えてこなかったことを悔やんでいる。
  • キャリアの問題、職場の問題など、部下から率直な話を聴くことの大切さも分かる。自分が若い頃、上司は良く話を聴いてくれた。
  • けれども、部下の話を聴いてしまったら、解決策を提示してやらないといけないよね? 俺は、自分のキャリアも描けない中で、部下のキャリアなんて約束してやることは出来ない。職場の問題についても、解決策を提示してやることなんて出来ない。
  • 聴いただけで、解決策が提示できなければ、部下を失望させるだけだし、マネージャーである自分も、部下から無能と思われてしまう。
  • そうならば、部下の言い分なんて、初めから聴かない方が良いのではないか?

こういう理屈なのです。「そんなことは無いって! あなただって昔、上司に話を聴いてもらったでしょ? その時、解決策なんて無かったでしょ? だけど聴いてもらって、スッキリしたでしょ?」と言っても、「昔は良い時代だったよね。酒飲んでくだ巻いて、しゃーねーな、まあ、やるだけやってみよう!って前向けたよね…」と。

「答えが無いと話をしちゃいけない時代」なんですよね。解決策なんて無いのに、正解を探しちゃう。「正解なんかありません」と開き直ると、「分かった、じゃあ正解が無いとしても、この提案は”最善”なんだろうな!?」と返ってくる。それでは誰も、何も話せなくなってしまいますよね。

このような背景には、 無能だと思われることへの恐怖があると、私は思います。「如何に自分が価値ある人間か?」をアピールすることに必死で生きてこられたのでしょう。部下から話を聴いた時点で、自分の上司に報告するときのことを想像し、「解決策が無ければいけない」と思い込んでしまうのです。

でも本当に強い上司は、「解決策が無いからこそ、相談に来たんだよね?」と受け止められる人。部下の役に立てないことを恐れない人です。そんな上司に対して部下は、無能だなんて思いません。「これは、あの人でも分からない、難しい問題なんだな。部下の自分が解けなくても仕方ないよね。」と自己肯定感さえ持つのではないでしょうか?

技術が細分化・高度化してきた現代において、「部下の方が実務に詳しい」なんてこと、当たり前にあるのです。ましてやキャリアの問題なんて、明確な解決策なんて無くて当たり前。解決策が無い話であろうと、それを聴き、受け止める… ネガティブケイパビリティこそ、今の時代の上司に求められる能力であると、私は思います。□

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