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  3. 理由が分かれば治すことが出来るのか? ~全人的な関わりでコンステレーションを感じる~

日本における臨床心理学・分析心理学の権威、河合隼雄先生の最終講義の動画を拝見しました。講演のタイトルは「コンステレーションについて」。知的好奇心をかきたてられる素晴らしい内容でした。その中で紹介された、あるエピソードに深く共感したので、今回はそれについて書きたいと思います。

そのエピソードとは、「うちの子供が学校に行かない。先生、どうしてですか?」と訊ねてくる父親の話です。何とか学校に行かせたいので、子供に理由を訊ねるのですが、子供は何故だか学校に行けないのです。通学路に居る怖い犬や、怖い先生という原因を取り除いても、学校に行けない。親は「うちの子供を学校に行かせるためのボタンは何処に在るのですか?」と迫ってくるのです。

河合先生は「因果関係が明確で、指先一本、ワンタッチで結果が得られる現代社会に慣れちゃったんでしょうね。自分の子供にもボタンが在って、それを押したら学校に行くようになると思っちゃってるんですよね。」と苦笑します。

因果関係が明確な機械ならば、誤動作の原因を知り、それを取り除けば正常に動作するようになるでしょう。これはアドラーが言うところの原因論です。高度に機械化・組織化された現代社会においてはこれが基本です。大規模システムにおける失敗、例えば航空機の墜落事故などについて、因果関係を明らかにするのは容易ではありませんが、基本「こうしたら、こうなる」という因果律に基づいて、失敗の原因を探り、それを取り除いていきます。ボタン一つで望んだ結果となるように、システムを設計し、維持管理していくのです。

先の相談事例に照らすと、父親は「学校に行かない子供」に対し、一線を引いた外側から、「子供が学校にいくようになる」ボタンを押そうとしているようなものだと先生は続けます(下図左)。「理由が分かれば治すことが出来ると思い込んでいる」のだと。

河合先生の板書を基に筆者作成

しかし、我々人間の心は複雑であり、単純な因果関係だけで悩みが解決するはずもありません。父親は、客観視するために引いた線を取り除き、自分の息子の問題に全人的に関わる必要がある。そしてカウンセラーも、そこに在るコンステレーション(布置、巡り合わせ)を感じ、その解決を支援していく…(上図右) カウンセラーには、そんな関わり方が求められるのだと、私は理解しました。

私は学生時代、天文ファンでした。コンステレーション(Constellation)って”星座”の意味なんですよね。古代、天動説が信じられていた頃から、人は星の並びに何かしらの意味を見出してきました。それが星座です。しかし星座を構成する星々って、地球からの距離はまちまちであり、たまたま地球から見たとき、その並びに見えているだけなんですよね。そう考えると、カウンセラーが全人的な関わりをすることで見出したコンステレーションも、「ある一つの方向から見たときの関係性に過ぎない」と言えるでしょう。河合先生も、過度にコンステレーション的な考え方に捕らわれてしまうことの危険性について、語っておられました。

真の関係性なんて分からない。けれども、そこに意味を見出そうとする人間の営みがある… そう考えると、「絶望の淵に立ちつつも、一筋の光明を見出す」というネガティブケイパビリティの話ともつながってきますね。 私は自身のキャリアの中に、コンステレーションを見出すと、とてもワクワクします。 あっ、これって、Steve Jobs の名言「Connecting the dots」ともつながりますね。コンステレーション、深い言葉です。□

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