技術者育成がうまくいかない理由

技術者文化

― 技術部門主導で考える人材育成の本質

技術者の育成は、誰が担うべきなのか

前回のコラムでは、
「技術者が育つとは何か」について整理し、
人事・経営、技術部門、若手技術者の三者で、
人材育成に対する見方が異なることを示しました。

技術者が育たない原因は一つではありません。
しかし、その根底には
👉 「何を育てるべきか」という前提のズレ
があります。

では、そもそも技術者は誰が育てるべきなのでしょうか。

私は、
👉 技術者の育成は、技術部門が主導するべきである
と考えています。

人事はそれを支援し、仕組み化する。
この役割分担が機能してはじめて、

  • 成長機会
  • 成長実感
  • 成長の予感

が、若手技術者に生まれてくるのです。

なぜ人事主導では機能しないのか

人事部門が担う教育は、基本的に「全社共通」です。

  • 経営理念(Mission / Vision / Value)
  • 階層別研修
  • リーダーシップ研修

これらは、会社全体に共通する基盤として不可欠です。

しかし一方で、各部門にはそれぞれ固有の専門性があります。

  • 法務には法務のスキル
  • 営業には営業のスキル
  • 技術には技術のスキル

これらは、実務と不可分であり、
現場でしか育てられない領域です。

技術教育も例外ではありません。

👉 専門性の高い教育は、現場でしか成立しない

のです。

人事と技術者の「思考法の違い」

それでは、なぜ技術部門の教育だけが、
人事との間でズレやすいのでしょうか。

これは、優劣ではなく
👉 思考法の違い
によるものです。

人事は、悩みの本質を捉えようとし、
👉「情(感情)」に焦点を当てる

技術者は、問題を解決しようとし、
👉「知(論理)」に焦点を当てる

この違いは、日常の会話にも現れます。

例えば面談の場で、

  • 人事:「そのとき、どう感じましたか?」
  • 技術者:「それは〇〇という理由から起きています」

というすれ違いが起きることがあります。

このとき両者は、
👉 違うものを見ている
のです。

この状態が続くと、議論は

  • 会社としてどうあるべきか
  • 社会的にどうか

といった「正しさ(意)」の話に収束します。

しかしそこには、

  • 個人の納得(情)
  • 実務的な理解(知)

が伴っていません。

👉 結果として、誰も腹落ちしない

のです。

技術部門も動けない理由

では、技術部門が主導すれば解決するのか。

現実はそう単純ではありません。

技術部門もまた、

  • テクニカルスキルだけでは不十分であること
  • 人を動かすには別の力が必要であること
  • 新規事業には従来と異なる能力が必要であること

を理解しています。

しかし、

  • 短期成果のプレッシャー
  • 教育の優先順位の低さ
  • 人材育成は人事の仕事という認識

が重なり、
👉 動けない状態
に陥っているのです。

この結果、技術者育成は
👉 「三遊間のゴロ」
になります。

誰もが必要だと分かっている。
しかし、誰も取りに行かない。

技術者育成を機能させるために

では、この構造をどう変えればよいのでしょうか。

必要なのは、
👉 経営理念と現場を結び直すこと
です。

人事は「全社の理念」から育成を考える。
技術部門は「現場の実務」から育成を考える。

この二つが分断されたままでは、
人材育成は機能しません。

👉 理念を現場の言葉に翻訳すること

これが、技術者育成を機能させる鍵になります。


次回予告

では、この翻訳はどのように行えばよいのでしょうか。

次回は、

👉 経営理念を技術部門に落とし込む具体的な方法

について解説します。


技術者文化シリーズ

  1. 技術者はなぜキャリアを語らないのか
  2. 技術者はなぜマネジメントを躊躇うのか
  3. 技術系マネージャーはなぜ1on1が苦手なのか
  4. 技術者の思考の特徴
  5. 技術者育成の難しさ
  6. 技術教育と人材育成は同じではない
  7. 技術者が育つとは何か ― 技術者育成の議論がすれ違う理由
  8. 技術者育成がうまくいかない理由 ― 技術部門主導で考える人材育成の本質(本投稿)
  9. 技術者育成を機能させる方法 ー 経営理念を技術部門に落し込む

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