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  3. フォーカスすべき経験とは何か? ~主訴につながる経験を再現しよう~
このコラムにおいては、主訴につながる経験を再現することの大切さについて述べます。
対象: 、所要:3分

キャリアコンサルティングのロープレをしていると、「フォーカスすべき経験」という表現が時折出てきます。キャリアコンサルタントの実技試験では、僅か15minの中で相談者の方との関係構築(ラポールの構築)~経験の再現~主訴の把握までを行うため、主訴につながらないような経験ばかりを聴いていると時間が無くなってしまうのです。

もちろん、”無駄話”も関係構築には重要であり、相談者が話したいことであればどんどん語ってもらえばいいのです。もしそれで時間が無くなり、主訴の把握に至らなかったとしても、口頭試問では「相談者が気持ちよく語っておられましたので関係構築を優先し、主訴の把握にまで至りませんでした」と答えれば問題ないと思います。しかしながら関係構築が出来たなら、「フォーカスすべき経験とは何か?」を意識しながら、カウンセリングを進めていくと良いのではないでしょうか?

ここで「フォーカスすべき経験」とは何でしょう? 一言でいえば主訴につながる経験です。主訴とは相談者が抱えている問題であり、自己概念の揺らぎです。例えば単に「上司との関係が上手くいかなくて困っている」という表面的事象として捉えるのではなく、「なぜ上司の価値観を受容れられないのか? そこにはどんな自分が居るのか?」について、相談者自身に気付いてもらう必要があります。

事象として見えている問題を解決しようとすると、「上司の言うことなんて、程よく受け入れておけばいいんじゃないですか? 大人の対応で行きましょう」とか、「どうしても受け容れられなければ異動希望を出せばいいんじゃないですか?」などと、要らぬアドバイスをしてしまいます。こういったアドバイスをしても、相談者は既に考えてきたことであって、(そんなことは考えたよ。でもそれでもモヤモヤしているから、相談に来たんじゃないか!)と怒ってしまいますよね。

今見えている問題ではなく、「相談者のココロの奥で、何が揺らいでいるのか?」という視点を持つことで、再現すべき経験にフォーカスされるのです。

表面的事象の奥に何があるのか?
  • 「上司から指示が下りた時、モヤモヤしたんですね? なぜ貴方はそれを受容れられなかったのでしょう?」
  • 「貴方が大切にしたいものは何ですか?」
  • 「あなたが大切にしてきた価値観、そう考えるきっかけとなったエピソードを聞かせていただけますか?」

このように問うことで、相談者の「守りたい価値観」や「受容れたくない価値観」が語られることでしょう。これが分かれば主訴は明確ですね。

受験生のロープレ会に参加させていただいていると、状況証拠を集めようとして色々な質問を投げかけ、事情聴取のようになってしまう方がおられます。

状況を教えて!
  • 「周りの方は上司の言動に対し、どう言っているんですか?」
  • 「同僚の方に相談しましたか?」
  • 「ご家族は何と言ってますか?」

などという質問も、「いろいろな見立て」を集めて問題を解決しようとする姿勢が透けて見えてしまうのです。

「シュロスバーグの4S理論(Situation / Self / Supports / Strategies)に基づいて、状況と支援先を確認してるだけなのですがダメでしょうか?」と言われたこともありますが、冒頭15minの面談において重視すべきは相談者自身がどのように感じているかであって、Selfを問うフェーズだと思うのです。

あくまでも「相談者のココロの中で、何が揺らいでいるか?」と意識することによって、「フォーカスすべき経験」は明確になり、「キャリアカウンセラーの意図」はそこに現れると、私は考えています。□

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