このコラムでは、キャリアカウンセリングにおいて、クライエントと話のペースが合わずに失敗した私の経験を語ります。 対象:、所要:3分
ペーシングとはカウンセリングの場面において、相手と呼吸を合わせることであり、信頼関係構築の基本です。しかし、いざ実践となると難しい。クライエントがゆっくりしゃべっているのにカウンセラーが早口で返したり、クライエントがテンポよくしゃべっているのにカウンセラーがのんびり話したり… 空気が読めないと言われればそうかもしれませんが、キャリコンの実技試験など極度に緊張している場面では、話のペースが速くなりがちですよね。
そんなときお薦めしたいのは、”相手の呼吸を見る”こと。警策という棒を持って見回る座禅道場のお坊さんのごとく、クライエントの表情、姿勢、発声に意識を集中することで、呼吸のペースや深さが見えてきます。そして自身の呼吸をクライエントに合わせていくのです。すると自然にこちらの緊張感も解され、相手の話に集中できるようになります。
昨今はスマホやPCで撮影した顔画像の動画から脈拍を測定したり、そのパターンから自律神経の活性度を測定することが可能になっているようです。我々人間も意識はしないものの、相手の顔色、息遣いを見ることで、相手の様子を察する能力があるはず。それが集団生活をすることで生き抜いてきたホモサピエンスだからです。
なお、明らかに呼吸が浅くイラついていたり、集中できていないクライエントに対しては、無理に呼吸を合わせる必要はないかと思います。本当に上手な聞き手の方は、激高しているクライエントに対して、わざとゆっくりしゃべり、相手の気持ちを落ち着かせたりしますよね。楽しい話をしているのに、あえて無表情を装う方もおられます。クライエントの呼吸を見つつも惑わされず、場の空気を自在にコントロールする…そんな熟練の技を見ると、ただただ感服してしまいますね。修行していきたいと思います。□