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このコラムでは、カウンセリングの普及を阻むものについて、私見をまとめました。
対象:  、所要:3分

私は前職において、所属する部門の技術者のキャリアを支援したいと考え、キャリアコンサルタントの資格を取得しました。自動車業界は100年に一度という大変革期を迎えています。「今まで研究開発してきた技術領域への需要が激減した」、「新分野に取り組まないと手遅れになる」といった切迫感の下、多くの技術者が今後のキャリアに不安を抱いています。

「キャリアに関する専門知識を身に着ければ、 悩める技術者を支援することが出来る!」と確信して、資格を取得したのでした。

しかし… 現実は甘くありません。「専門知識を習得しました」、「カウンセリングできます!」と手を挙げても、全く声がかからないのです。もちろん、資格を取ったばかりで、ちゃんとしたカウンセリングが出来るなどとは思っていません。かと言って、社内にはキャリコン有資格者は居ません。ただただ使命感に駆られ、”恥を忍んで”手を挙げたのです。

しかし資格取得後の1年半で、キャリア面談をさせていただいた方は僅か数名でした。こちらからガツガツ行っては本末転倒なので、ゆるーくお話を聴かせていただきましたが、継続的に面談を行うまでには至りませんでした。上手くいかなかった理由には以下のようなことがあると私は分析しています。

  • 私は企画部門に所属しており、その部門の人事も扱っていました。「守秘義務は遵守します」と声高に叫んでみても、人事の人にはデリケートな話は出来ませんよね。ちなみに私は部下のいない課長級の職でしたので、人事権など全くありません(笑)
  • 私はそれ以前の業務において比較的露出の多い仕事をしており、すっかり面が割れていました。良く知った人にデリケートな話など出来ませんよね。
  • 私は推しが強く、他人の話を聴かない人と認識されており、いくら「傾聴を学んできました!」と叫んでみても、誰も信じてもらえませんでした(泣)。私は生まれ変わったつもりでしたが、”因果応報”ですね。(笑) この点については心底悩んだのですが、結局どうにもなりませんでした…
  • 私は元技術者であり、カウンセリングの主たる対象となる人と同年代。「貴方は新しい資格を取って転身したからいいかもしれないが、そう簡単にいかないよ!」と何人もの方に言われました。こうなるとカウンセリングの席についていただくことさえ難しいのです。

会社という組織に長く居ると、他の社員の方とは多かれ少なかれ”多重関係”ですね。その方がどんな経歴を歩んでこられたのか近くで見ていますし、どのような人間関係の中でお仕事をされているのか見ています。バイアスなく見ることが出来れば良いのでしょうが、その多くは偏見に満ちています。

キャリアコンサルタント倫理要綱の第10条2にあるように、多重関係にある方に対し、キャリアコンサルティングをすることは出来ないのです。そう考えると、上司/部下の1on1もキャリア面談も容易ではありませんね。

やはり、キャリアカウンセリングを行うのは「面識の無い第三者」の方がいいですよね。黒子がいいんです。だからと言って、社外の人にお願いするとなると…

  • 職場の恥部(問題点)が社外に漏れるんじゃないか? と警戒される。
  • 離職、転職のきっかけになってしまうのではないか? と警戒される

といった新たな問題が生じます。「キャリア意思が表明できる機会があると転職意向が下がる」という調査結果もあるのに残念ですね。カウンセリングを普及させるには、こういった思い込みを解きほぐしていくことが必要ですね。□

※第一弾は、こちら

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