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  3. 四料揀と和尚さんのカウンセリング ~四つの場面の使い分け~
このコラムでは、僧堂における四料揀(しりょうけん)を通じて、人と人の関わり方について考察します。
対象:  、所要:3分

私は毎朝、YouTubeにて臨済宗円覚寺派管長 横田南嶺老師の管長日記を聴いています。10分くらいの法話と1分の瞑想からなるラジオプログラムですが、これを聴くと「今日一日を大事に過ごそう」と思えるのです。世がコロナ禍に入ってから始まったのですが、本日11/29時点で692回。丸二年を迎えようとしています。

さて11/25は「四つの場面を切り替える」と題して、臨済禅師が説かれた四料揀(しりょうけん)についてお話しされておりました。人(にん、自分)と境(きょう、周囲の環境、他者)の関わりは四つの形態をとること、その関わり合いの中でいろいろと問題が起きること、それを場面場面で切り替えていくことが肝要であることと説いておられました。

とても興味深いお話しでしたので、私なりの解釈を加えて紹介したいと思います。なお原典はココ(YouTube音声)ココ(テキスト)にありますから、ぜひ一度ご覧ください。ココにも詳しく載っています。私の稚拙な解説が誤っている場合は、ご指摘いただけますと幸いです。

さて、四料揀をMOTチックにマトリックスで表すと下図のようになります。

四料揀

横軸に人(主観)を取り、縦軸に境(客観)を取り、それぞれ、奪/不奪と場合分けします。奪とは奪われる、すなわち無いこと。不奪とは奪わないこと、すなわち在ることです。その組合せからなる四つの状態を、漢字五文字で以下のように表現しています。

① 奪人不奪境  人が無く、境が在ること
② 奪境不奪人  人が在り、境が無いこと
③ 人境両倶奪  人が無く、境も無いこと
④ 人境倶不奪  人が在り、境も在ること

この四つの状態の切替えを、1)僧堂修行の場面、2)お寺に入った場面、3)和尚さんになった場面の三つにおいて説明されており、3)は正に「和尚さんのカウンセリング」と呼ぶべきものです。これを紹介しましょう。

お寺には悩みを抱えた方がたくさん相談に訪れます。和尚さんはまず、①奪人不奪境。自身を殺して相手を奪わない。ただただ相手の話を聴いて差し上げる、傾聴です。

とことん聴いたら、②奪境不奪人。相手を奪って仏の教えを説くのです。愛に溢れた ”喝!”って感じですかね。適切な説法をするには厳しい修行が必要なことは言うまでもありません。

さて、ここで終わらないのがみそ。次は③人境両倶奪です。「共に坐りましょう」と言って、我も人もない、我も世界もない処に坐るのです。ここに安らぎの世界があります。

そして最後は、④人境倶不奪。坐禅が終わったならば、お茶を入れて差し上げ、「我も生かし、相手も生かす、自由にお互いを論じ合う世界」になる。”みんな違ってみんないい”、Well-beingの世界と言えましょう。

このように四つの場面を使い分けていく… ③、④が禅らしい部分ではないでしょうか? カウンセリングの世界に当てはめると、とても興味深い話だと思いませんか?□

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