「職場の人間関係を改善し、業務を円滑に進める」などの目的で、1on1を取り入れる企業が増えています。この背景には、コロナ禍による在宅勤務の増加によってコミュニケーションが希薄化したことが上げられますが、「単なる雑談やガス抜きに終わり、生産性向上にはつながらない」といった声もあるようです。そこで、1on1をめぐる上司/部下の言い分についてまとめ、何故そのようなギャップが生じるのか考えてみましょう。
まずは対話の進め方。「会社から実施するように言われているが、どう進めていいのか分からない」というお悩みは、とてもとても多いのです。「会話が途切れないような質問の仕方を教えて下さい!」などという、切実な声もあります。日常業務においては、正確な情報のやり取りが求められているため、曖昧なことが聴けないんですよね。

私は前職で上司と1on1をした際、その冒頭上司から「今日のテーマだけど、①この機に私に伝えておきたいこと、②趣味などプライベートな話、③業務についての相談、このうちどれがいい?」と訊かれたことがあります。私が③を選んだ時の、上司のほっとした顔が忘れられません。多くの同僚は②を選んでいましたが、これもウェルカムだったようですね。この場をどんな場にしたらいいのか? 上司も部下も分からず、”腹の探り合い”になるんです。ああ、何と寂しい職場…
多くの場合、1on1の目的は「業務を円滑に進めるため」と掲げられていますので、問題解決思考が強い職場では「課題を明確にして改善につなげよう!」となります。すると部下は「職場の環境や人間関係を改善したい」と考え、現状認識をし、上司への要望を口にします。上司は「その問題には、こう対応して!」と直ぐに裁きたくなるのをグッと抑え、黙って要望を聴きます。部署を跨ぐ問題などについては、その場で何ともし難く、会社としての対応を伝えることは出来ません。上司は仕方なく「私はこうしたらいいと思う」と私見を示しますが、部下は納得しません。部下にしてみれば、容易な問題ではないので、あえてこの場で言ってみたのです。

(あのなあ、文句ばかり言うなよ)と呆れる上司。(えっ、解決してくれないの?)という部下。ならば聴きたくないし、言いたくもない。どちらもモヤモヤを募らせるばかりです。
一方、プライバシーや対話の意義に対しても、大きなギャップがあります。昨今はコンプラ重視社会。トラブルにつながるようなプライベートな話題については、お互いに触れない/話さないが徹底しています。同僚とならまだしも、上司に個人情報を伝えるなんて、多くの方はしません。

対話の意義について、会社からは「これも仕事のうち。就業時間中にちゃんと時間を確保して実施せよ」と展開されます。しかし業務効率を落とす訳にもいきません。多くの部下の話を聴く上司はヘトヘトになり、それを見た部下は「あんな仕事はしたくない」、「まるで罰ゲームだな」となるのです。「業務の進捗状況をフォローする時間」になる背景には、「そうした方がお互い様」のような雰囲気があるのです。こうなると「1on1とは、そもその何の為の場?」となりますよね。
何故このようなことになってしまうのでしょうか? 私は「上司/部下とも、聴いてもらって嬉しかった経験をしたことがない」からだと思います。「聴くとはどういうことか?」を学ぶことも必要ですが、その前提として「聴いてもらうこととは、どういうことか?」実体験を通して腹落ちすることが必要だと、私は思うのです。そんな貴方、ぜひ当相談室にお越し下さい。会社では教えてくれない1on1の勘所について、ぜひ体験していただけたらと思います。□
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