国はミドルシニアのキャリア自律を図るため、ポータブルスキルの見える化を推進しています。
- 現職においてあなたが培ってきた、”仕事のし方” や ”人との関わり方” は、業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力(=ポータブルスキル)です!
- それを見える化して、キャリアチェンジやキャリア形成に活かしましょう!
という訳です。受診すると、貴方が持っているスキルが活かせそうな職務・職位が提示されます。
私は前職において研究開発部署に所属しており、人材育成を担当していました。イノベーションを生み出すには個々人のキャリア形成を強化する必要があり、技術的専門能力以外のスキルについても、見える化することになりました。当時、職業能力を見える化するためには、官民いろいろな機関から尺度が提案されていました。その中で最大かつ詳細なものが、厚生労働省の「職業能力評価基準」。仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したものです。
これを見た時の驚きと失●は今でも忘れることは出来ません。まずは、その網羅性にビックリしました。各業界団体の協力の下、作成されたこの資料は、国だからこそ出来た産物であり、よくぞ取りまとめたものだと感心しました。相当な費用、人工が掛かっていると思います。しかし同時に「研究開発職」に相当する項目が無いことにも、すぐ気付きました。
私は「研究開発業務に必要な能力」を見える化するために、試行錯誤を繰り返しましたが、はっきり言えるのは、「対象とする技術領域や開発のフェーズによって、必要な能力は千差万別であり、標準的に示すことなど不可能だ」ということです。先の資料を見た時、ちょっと期待してしまったのは、「国の資料があれば、上司を説得できる!」と考えたからです。当時の上司は、エビデンス大好き人間だったのです。(笑) 当時、民間のコンサルタントにも相談しましたが、「研究開発業務は会社によりまちまち。標準化など無理だから、貴方の会社に特化した基準を作りなさい」と言われました。
さて、冒頭のポータブルスキルですが、受診後、貴方に提示される「職務・職位」は、上記の職業能力基準をデータベースとしています。つまりデータベースにない「研究開発職」は提示されないのです。
私はミドルシニアの技術者に対し「専門技術以外のスキルを棚卸ししませんか?」と提案してきました。「この会社で、このフェーズの研究開発を進めるために必要な、技術以外のスキル」と限定した上で「ポータブルスキル(のようなもの)」を見える化しようとしたのです。しかし、とても強い反発を受けました。条件を限定すればするほど「当該部署における人事評価基準」になってしまうからです。
専門性の強い職種で働いている皆さまにとって、「ポータブルスキルを見える化せよ」と言われることには大きな抵抗がありますよね。「業種や職種が変わったら通用しないかもしれないが、会社に忠誠を誓って、会社のしくみの中でベストを尽くしてきた」というプライドがありますから…
しかし日本の産業界を取り巻く状況、職場の年齢構成を鑑みると、ミドルシニアが自身のキャリアを棚卸しし、自律的なキャリア形成、キャリアチェンジを行うことからは逃れられません。そこには技術系専門職も含まれていますが、悲しいかな会社は守ってくれないと私は思います。会社にあれこれ言われる前に、ご自身のキャリアを棚卸ししませんか? 別に転職やキャリアチェンジを前提とする必要はありません。当相談室でお話しを聴かせていただきます。□
~ ”カウンセリングのすすめ” シリーズ ~
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