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  3. 論語と算盤 ~道徳と経済は合一すべきである~

札野先生の講演内容のうち、重要な結論の一つに、「倫理的に仕事をすることにより、社会に福利をもたらし、技術者自身もよく生きられる」があります。倫理は守らなければいけないルールであり、足かせのように捉えるなら、技術者の幸せにはつながりません。しかしながら、志向倫理的な知識と判断能力に照らせば、これらは両立できるものなのです(下図)。

このように、一見両立しないような概念を同時に目指すべきとした人物が渋沢栄一です。日本実業界の父と呼ばれる渋沢栄一翁は「道徳と経済は合一すべきである」という”道徳経済合一説”を唱えました。「論語と算盤」には以下のように書かれています。

  • わたしは普段の経験から、「論語とソロバンは一致すべきものである」という自説を唱えている。(第4章 仁義と富貴「金銭に罪はない」)
  • 本当の経済活動は、社会のためになる道徳に基づかないと、決して長く続くものではない。(第4章 仁義と富貴「本当に正しく経済活動を行う方法」)
  • 利益を得ようとすることと、社会正義のための道徳にのっとるということは、両者バランスよく並び立ってこそ、初めて国家も健全に成長するようになる。個人もちょうどよい塩梅で、富を築いていくのである。(第4章 仁義と富貴「本当に正しく経済活動を行う方法」)
    (出典:渋沢 栄一 著、守屋 淳 訳、現代語訳 論語と算盤、ちくま新書)

経済とは「経世済民」を略した言葉で、「世の中をよく治めて民衆を苦しみから救う」という意味。単なる金儲けではなく、私たちを幸せにするものです。我々が目指すべきことに立ち返り、論語と言う道徳の下、正しい経済の実践を説いたのです。そうです、「技術者倫理とWell-beingは合一すべき」ものなのです。

渋沢栄一記念館にはアンドロイドがあり、音声でその講義を受けることができるようですね(深谷市HP)。これは大正12年(1923年)、84歳のときの言葉です。101年後、新紙幣の顔となった渋沢栄一翁、現代の研究・技術不正の状況を見られたら、何とおっしゃるでしょうか?□

※ 本稿は早稲田大学 札野教授のご講演内容に沿い、筆者の私見も交えてお伝えするものです。

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