問題文をどう捉えるか?
まず”問い4”の問題文を読んでみましょう。
問い4 事例Ⅱのやりとりの後、あなたならどのようなやりとりを面談で展開していくか、その理由も含めて具体的に解答欄に記述せよ 。(23回、JCDA論述試験)
この文章の中にも、いろいろな情報が含まれていますね。
- ”事例Ⅱのやりとりの後” → あくまで、事例Ⅱのやりとりの後の話で良く、”全体的な心構え”などは記載しなくて良いと思われます。
- ”あなたならどのようなやりとりを面談で展開していくか” → あなたがキャリアコンサルタントならば、どのようなやり取り(関わり方)をしますか? という意味です。
- ”その理由も含めて具体的に解答欄に記述せよ ” → 何故そのように関わりたいのか? 具体的に書けということですね。逐語録からキーワードを拾ってきましょう。
意味の出現を丁寧に進める
問い4は、「キャリアコンサルタントの在り方を問われている」と言えます。問い3で問われた問題をどのように解決していくのか? その解決策を示せば良いという方もおられますが、早々と目先の問題を解決することは適切でしょうか? 私は違うと思うのです。
論述試験の逐語録 事例Ⅱにおいては、経験を再現する中で相談者が自己の感情に気付き、内省や自己探索が始まったところで終わります。これは経験代謝のサイクルでいうところの「意味の出現」の入り口部分です。「ここから先、意味の出現フェーズに入ります」となれば、今後の展開は「意味の出現」をさらに促すことではないでしょうか? これは経験の中に見える意味を、相談者自身に気付いてもらうプロセスに他なりません。この段階を相談者とともに丁寧に歩むことが「意味の実現」につながる…これが経験代謝です。
このように考えると、問い4は、キャリアコンサルタントとして何を大事にして相談者に関わっていくのか、自分の考えを表現する場と言えるでしょう。
次にどんな問い掛けをしたいか?
具体的には、事例Ⅱの最終発言の後、どのような関わり合いをして「意味の出現」を促すか、表現してみてはいかがでしょうか? 例えば第20回の事例ならば、「自分の弱さですか… それを見せないようにすることで、守りたいことがあるのでしょうか?」と私は問うてみたいのです。この一言に、キャリアコンサルタントとしての姿勢が現われるからです。
べからず集
前述のような観点から、以下のようなスタンスはとらない方が良いでしょう。
✕ 問題解決を急ぐ
”経験の中に立ち現れてくる意味”が十分に明らかになっていないのに、問題解決を急いでしまわれる方がおられます。「経験の再現」の後、すぐに”事柄の” 問題解決をしてしまうのです。これでは「意味の実現」など出来ません。目先の対応策は具体化されるかもしれませんが、本質的な悩みの解決にはならないのです。
✕ 解決策を列挙する
問い3において相談者の問題を『この人には、○○力が不足しているな』と捉えてしまうと、『○○力を高められるような方策を授けてやろう』とか、『代わりに、こう考えたらいいのに』と解決策を考えてしまいます。キャリコンサルタントが考えた問題解決策を並べて、相談者に選んでもらおうとしてしまいます。
これでは、「相談者の自己概念の成長」という、キャリアカウンセリングの目的は果たせません。解決策を具体化するのはもっと後でよく、「意味の実現」を経たのなら、解決策は相談者自身が見つけているのです。
✕ ポジティブに導こうとする
相談者が夢に向かって挑戦をしている。しかし、それを実現するにはデメリットもある。そんなとき、キャリアコンサルタントは「相談者がポジティブに歩めるよう、背中を押してやろう!」と思いますよね。「新たな挑戦を支援してあげたい」…これはとても自然なことです。
しかし、ポジティブな選択をするにせよ、ネガティブな選択をするにせよ、それを選ぶのは相談者自身です。「キャリアコンサルタントが仕向けるもの」ではないのです。キャリアコンサルタントに出来ることは、相談者の中に幾つかの選択肢が浮かんできたら、それを相談者自らに選んでもらうことなのです。
まとめ
論述問い4は、”キャリコンサルタントとしての在り方”を問うものです。ポイントは…
- 「意味の出現」を丁寧に進める
- 問題解決を急がない
- 解決策を列挙しない
- ポジティブに導こうとしない
これは単なるテクニックではありません。その背景にあるのは、「来談者中心のカウンセリング」の考え方です。その意味をよく考えて、問い4に向かいましょう。□
※このコラムは、以前掲載した「問い4はCCtの在り方を示す場 ~あなたはどんな関わり方をしたいのか?~」と「論述問い4べからず集 ~問題を解決するのは相談者自身~」を統合し、再編集したものです。
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