具体的なシーンを求め過ぎる ~好意的関心を持って聴きましょう~

キャリアコンサルタントの部屋
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経験代謝のメカニズムを覚えたての頃です。「来談目的を聴いたら、その背景にある経験を聴かねばならない。経験は出来事と感情からできている。具体的なシーンをありありと再現してもらい、そこで生じた感情を聴く…」これを自身に言い聞かせておりました。

シーンをありありと再現するためには、「それは何時のことですか?」、「どこで起きたのですか?」と問い、「誰に何を言われたのか」訊ねます。やり過ぎると事情聴取のようになってしまうのですが、私は”登場人物”を明らかにすることが、その時の感情を蘇らせるためには重要だと考えていました。「人は他人に対峙したときに感情を抱く」と考えていたからです。

無論、今でもその考えは変わりません。しかしロープレを繰り返すうち、①具体的な経験は無いのに何となくモヤモヤしている場合や、②辛い経験は思い出すので語りたくないという場合、③沢山の経験が積み重なっており、一つの経験では語れないという場合もあることに気付きました。

「何かきっかけがあった訳でもないのに、何となくモヤモヤしているのですよね…」という場合、「具体的な経験を教えて下さい!」なんて言ってしまうと、「だから… 何となくモヤモヤするのですよね」と言われてしまうでしょう。「どんなときモヤモヤするのですか?」、「頭がモヤモヤするのですか?」、「胸のあたりですかねえ…」などと、沈黙を恐れず、ゆっくりゆっくり語ってもらわなければなりません。登場人物は、クライエントだけのこともあります。

②や③の場合は具体的なシーンではなく、経験に対するクライエントの見立て(解釈)が語られるでしょう。いわば「経験の再現」を促す前に、意味が語られていると言えるのではないでしょうか。こういう場合に「具体的に語って下さい」と言ってしまうと、「ん? 俺の見立てに納得していないのか?」となり、信頼関係構築が怪しくなります。だからと言って「そう解釈されているのですね」と全面的に受け入れてしまっても、悩みは解決しないでしょう。クライエントが見立てた意味を、自身が受け容れられるなら、悩んでいないからです。

では、そのような場合、どうしたらいいのか? 「語られていない経験」に戻って、そこに現れる意味がどのようなものなのか、もう一度見る必要があるのではないでしょうか? クライエントが見立てた意味を受け止めた上で、語られていない経験を語ってもらう。「そうなのですか… そのように捉えているのですね。 良かったら、もう少しお話しいただけますか?」と好意的関心を持って聴いていくのが良いのだと思います。

何だかとても抽象的な話になってしまいました。申し訳ありません。「具体的な経験を教えて下さい!」を連発してしまっていた頃を思い出しながら、私の中のモヤモヤを言葉にしてみました。 □

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