1. ホーム
  2. キャリアコンサルタントの部屋
  3. 「具体的に教えて下さい」の連発 ~事情聴取ではありません~
このコラムでは、キャリアカウンセリングが「事情聴取」になってしまった、私の失敗談を語ります。
対象:、所要:3分

経験代謝のサイクルを覚えたての頃、よくやってしまったのがこのパターン。クライエントから来談目的が語られるやいなや、すぐさま復唱。「そうなのですね。具体的に何があったのですか?」と問い、経験の再現を試みます。とにもかくにも事柄を聴き、その中に感情表現が現れないか必死に耳を傾けます。感情が現れないと思うと、「他にはどのようなことがあったのですか?具体的に教えて下さい。」と先を急ぎますが、感情は現れません。そんなやり取りを何度も続けてしまうことが、私にはありました。後に残るのは「無理やり掘ろうとした穴」の数々。結局、どの経験についても中途半端な理解で終わります。

考えてみれば当たり前ですよね。信頼関係も築けていないうちに、感情表現がぽんぽんと出てくるわけがないのです。場合によっては、来談目的のきっかけとなった出来事については思い出したくもないこともあるのでしょう。それを具体的に語れだなんて… ちょっと勘弁してよという感じになります。

そんなクライエントは半ば呆れ気味に「とにかく嫌な思いをしたのですよ」などと曖昧な感情表現をすることがあります。そんなとき私は「嫌な思いですか? 具体的にどんな感じですか?」などと、さらに攻め入ってしまったのです。ここまでくると事情聴取ですね。

これはあくまでも、ロープレの場面であったので、クライエント役の方は許してくれましたが、実際のカウンセリングの場面であったのなら完全アウトでしょう。席を立って帰っちゃったかもしれません。

それでは私はどうすればよかったのでしょうか? ヒントを2つお伝えします。

来談目的を聞いたら、その言葉を噛みしめる

「今日はどんなご相談で来られましたか?」という問いの後に発せられる、”来談目的”はとても多くニュアンスを含んだ大事なフレーズです。実技試験におけるクライエント役の方も、このフレーズは予め決めて臨んで来られると予想します。そのため、この言葉はしっかりと受け止め、それを噛みしめながら復唱することをお薦めします。

「具体的に何があったのですか?」などと先を急ぐ必要は全くないのです。沈黙を恐れず、じっくりとクライエントの様子を伺うくらいで丁度良いのかもしれません。そうすれば、クライエントに”これから大事なお話を聴かせていただく”という姿勢が伝わるでしょう。

「具体的に」を使わずとも具体的に話してもらえる

「具体的に教えて下さい」という問いには、(今の発言だけでは分からないです。もっと詳しく語ってもらえないと、アドバイスできませんよ)といったニュアンスが含まれてしまうように私は思います。1~2回ならまだしも、何度も言われると、クライエントは具体的でない発言を責められたように感じるかもしれません。

そんなときはどうするか? クライエントが語った事柄をただただ復唱すればいいのです。例えばクライエントが「〇〇なことがあったんですよ」と言った後、「もっと具体的に」と問うのではなく、「〇〇なことがあったのですね?」とクエスチョンマークを添えながら反復すればいいのです。この辺りが日本語の良いところで、ちょっと語尾を上げ、疑問符を添えるだけで、(もうちょっと具体的に伝えないと、キャリアコンサルタントには分かってもらえないな)ということが伝わり、クライエント自ら詳しく説明してもらえるのです。

このテクニックを使うと、「具体的に教えて下さい」を乱発することは無くなります。無理に具体化を促す質問をしようと思わず、テニスのラリーのように、ポーンと軽く打ち返せばいいのです。もちろん、相手が捕りやすいところにです。□

\ 気に入ったら、いいね&シェア下さい/