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このコラムでは、カウンセリングの普及を阻むものについて、私見をまとめました。
対象:  、所要:3分

国はキャリアコンサルタントを、平成36年度末*に10万人にする計画を立てていたようです。しかしR5年2月末時点では6.6万人と伸び悩んでいます。何故でしょう? その理由の一つに、キャリアコンサルティングを受けたいという人が、まだまだ少ないことが上げられるのではないでしょうか? つまり苦労して資格を取っても、キャリアカウンセリングを実践してみる機会が少ないという問題です。今回はキャリアカウンセリングの普及を阻むものについて考えます。(*平成36年=令和6年ですから、目標達成の期限は来年2024年に迫っているのです。)

キャリアに限らず、カウンセリングを受けることにはネガティブなイメージが付いています。「カウンセリング」とは…

個人のもつ悩みや問題を解決するため、助言を与えること。精神医学・臨床心理学等の立場から行うときは、心理カウンセリングと呼ぶことがある。身上相談。

(広辞苑)

この後半部分にある精神医療のイメージが強いのでしょう。「心が病むこと」は決して特別のことではないのですが、日本に我慢を美徳とする文化が根付いていることが、相談=ネガティブに捉えられる理由の一つかもしれません。

なお、仏教で”我慢”というと「強い自我意識から生まれる慢心のこと」(日蓮宗ポータルサイト)であり、煩悩の一つ。決して良い意味ではないですね。「自分で何とかできる!」なんて思わず、さっさと他人に相談すればいいのです。

さて、キャリアコンサルタントが自己の専門性を超える範囲のことを行うことは禁じられています(キャリアコンサルタント倫理要綱 第8条)。よって心理カウンセリングを行うことは出来ません。

すなわちキャリアを対象とするカウンセリングは、「個人のもつ悩みや問題を解決するため、助言を与えること。身上相談。」となりましょう。しかし、ここにも未だ問題があると私は思うのです。「助言を与えること」、これもカウンセリングの普及を阻んでいないでしょうか?

私は前職にてキャリアコンサルタントの資格を取得したことを同僚に話すと、以下のような返事が返ってきました。「転職先を斡旋してくれるの?」、「 それとも俺のキャリアを描いてくれるの?」と。 キャリアという言葉の捉え方についてここでは論じませんが、「解決策=アドバイス、助言」を与えてくれるのがキャリアコンサルタントであると思っておられるのです。

しかし、JCDAで言うところのキャリアカウンセリングの目的は、「相談者の自己概念の成長」であって「解決策を与えること」ではないのです。解決策は自らの悩みの本質に気付き、解決策は自ら立案する… キャリアコンサルタントはそのお手伝いをするだけなのです。

相談者が「解決策を与えてくれるのがキャリアコンサルタント」と思ってカウンセリングに臨んでいただくことは問題ありません。終わった後、「解決策の提示は無かったけれど、なぜ悩んでいたのか分かった。この先は自分の足で歩んでいける!」と思って帰っていただければいいのですから…

しかし「解決策を与えてくれるのがキャリアコンサルタントだ!」と最初から強く思われてしまっていると、「助言なんて無理だよね? この人にこの業界の、俺の職場の何が分かるんだ? 解決策を持っている訳ないよね?」と思われてしまったら、カウンセリングの場にさえ来ていただけません。

このようにキャリアカウンセリングの普及を阻むものには、以下の2つがあると思うのです。

  • 他人に悩みを相談することは恥ずかしく、我慢するのが美徳という思い込みがある
  • コンサルタントは解決策を与えてくれるものという思い込みがある

いずれも一朝一夕でどうにかなる問題ではなく、「キャリアカウンセリングを受けて良かった」と思ってくれる人を一人でも増やしていくしかありません。正に”担雪埋井”だと、私は思います。□

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