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  3. 長い道のり ~個人からお金をいただくということ~

このページを見て下さっている方には、キャリコン受験生や、駆け出しの有資格者の方が多いと思います。私は2年前に資格を取得して以来、受験生の支援や有資格者の勉強会に、ずっと関わらせていただきました。その中で感じるのは、「キャリコンのキャリアデザインは本当に難しい」ということ。今回はこの問題について考えてみたいと思います。

私が受講した日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座は、3ヵ月超の期間で全12回。その後、ロープレ&論述勉強会および学科勉強で3ヵ月あまり… 受講開始から受験まで7ヶ月あるんです。年3回の国家試験に際しては、受験勉強中、年末年始の休みやゴールデンウィーク、盆休みがありますが、学科試験の勉強に忙殺されますよね。

そんな試験なので合格された方の喜びはひとしおです。合格率6割の国家資格なんて、易しいという方もおりますが、そんなことはないですねぇ。1回落ちてしまったら、4ヵ月後に再試験ですから、2回目で受かっても1年がかりです。

しかも合格したからといって、資格持っていなければ出来ない仕事は実は僅かです。「資格は取得したが活用の仕方が分からない」という声を沢山聴きます。キャリアコンサルタントは名称独占資格であっても、業務独占資格ではないからです(例えばココ)。今まで資格を持たずに関連業務(採用や相談業務)をやっておられた方はともかく、何か役立てるだろうという漠然とした思いで資格取得された方は大変。他人のキャリアを支援する前に、自分のキャリアを何とかする必要があるのです。

かく言う私の場合、企業内キャリコンを目指して資格取得しました。「100年に一度の大改革の時代、技術者のキャリアを支援したい!」と、面接試験で答えました。しかし思ったような活動が出来ずに、企業を飛び出しました。支援対象として考えていた技術者からは遠ざかり、その最新ニーズさえ見失っている有り様です(泣)。

転職サイトの求人情報を見ていれば分かりますが、求人が多いのは、人材採用・マッチングの営業職。そこで求められるのは、営業や人事部での経験&人脈です。教育機関でのキャリア支援も、私のようなシニア人材に求められるのは、企業での人事経験と人脈ですね。

また、自身の認識の甘さを痛感しているのは、「誰に対して、どんな支援をして(価値提供をして)、誰(のお財布)から対価をいただくか?」という観点が乏しかったことです。生々しい話なので、公の場で論じる人は居ないようですが、この観点でキャリコンのお仕事を分類すると、以下のようになると思います。

  1. 国:公共職業安定所(ハローワーク)や、キャリア形成・学び直し支援センター(キャリガク)でのお仕事に対する金の出処は国(税金)です。後者は国からの委託事業として民間企業が運営していますが、お金の出処は国。利用者個人のお財布ではありません。
  2. 企業:企業内キャリアコンサルタントや就職転職支援会社、人事系/教育系コンサルティング会社でのお仕事に対する対価の出処は企業です。人的資本経営の観点から、追い風が吹いていますね。こちらも利用者個人が身銭を切る訳ではありません。
  3. 教育機関:大学のキャリアセンターでのお仕事等は、これに相当します。利用者である学生は身銭を切りません。大学の入学案内では、「就職支援に手厚いこと」が盛んにアピールされています。
  4. 個人:個人が企業または個人事業主に申し込む、教育やカウンセリングに対して支払われる費用です。個人がコンサルティング料を支払い、就職や転職の支援をするお仕事も出てきているようですが、未だ僅かなようです。

上記4つの分類をしたとき、その総額をイメージしてみましょう。明確なデータが無いので恐縮ですが、動いているお金の総額で見れば…

国 ≫ 企業 > 教育機関 ≫ 個人

という順であることは疑いようがないでしょう。日本においてキャリア開発は組織(国・企業・教育機関)任せであり、個人が身銭を切って行うことでは、”未だ”ないようです。有資格者の宴席で「占いや恋愛相談に、ん万円払っても、キャリアカウンセリングに同額は払わないよね…」と言ったら、皆さん強く頷いておりました。

こんな自虐的なことを言っていても仕方ないのですが、事態は深刻です。有資格者を対象としたアンケートでも、大きな問題として取り上げられています(第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況に関する調査、労働政策研究報告書、No.277, 2023)。私は、国がお財布ではないところで、キャリコンのお仕事が回るようにしたい。それが出来ないとキャリアコンサルティングの社会実装には遠いと思います。有資格者の皆さま、ぜひこの問題について論じましょう。

私のように、個人を相手にお仕事しようなどという方は、全く新しい仕事を創造するくらいの勢いが必要だと思う、今日この頃… まだまだ長い道のりです。□

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