ロープレ勉強会のフィードバックの際、受験生から以下のような質問を受けることがあります。
- 「こんなこと、聞いちゃって良かったんでしょうか?」
- 「こんな質問は相談者に対し、失礼にならないのでしょうか?」
皆さん「これは〇、これは✕」と事例を知って、整理しておきたいのですね。
- 「職務質問にならないようにしましょう」
- 「問題解決を急がないようにしましょう」
と常日頃、べからず集をお伝えしてきたので、ガチガチになってしまい、次の質問が出なくなってしまっているのかもしれません。申し訳ありません。そこで最近私は「何を言うかより、どう言うかの方が大切です。」とお伝えするようにしています。
例えば「最近、上司との関係が上手くいかなくて相談に来た」という相談者が居るとしましょう。カウンセリングを進めていくと、相談者の上司であり課長のAさんは、相談者の同僚であるBさんのことばかりを気にかけていることが分かりました。相談者の業務については全くアドバイスをしてくれないようです。
この話を聴いたキャリアコンサルタントは、「それって、エコひいきじゃない? マネージャーとしてどうなの?」と思いました。聴いているうちに、こちらも腹が立ってきてしまい、「Aさんって、マネージャーとして、どうなんですかねえ!」と言ってしまいました。相談者は「そうなんですよ! ホントに! いつもそうなんです。部内ミーティングのときも、A課長はBばかりをフォローして… 私が部長に責められても、私のことなんて放ったらかしですよ。」と怒り心頭です。カウンセリングはその後、マネージャー失格のA課長にどう対処するか?という話になりました。
一方、別のキャリアコンサルタントにおいては、「ああ、それはエコひいきじゃないかな? マネージャーとしての資質に欠けるかもしれないな…」と思いつつも、じっと相談者を見つめ、静かな口調で「Aさんって、マネージャーとしてどうなんですかねえ?」と問いました。すると相談者は「そうですねぇ。A課長はBをエコひいきしているように思えます。」と静かに答えました。
「エコひいきですか… エコひいきされているBさんは、どんな様子ですか?」とキャリアコンサルタントが問います。「う~ん…そうですねえ。Bはとてもおっちょこちょいで、仕事のミスも多いんですよね。A課長にフォローされていますが、いつも一人でバタバタしていて… 自分がひいきされているとは思っていないかもな…」と言いました。
どうでしょう? キャリアコンサルタントから掛けた言葉は全く同じなのに、見えてきた景色が違うのです。相談者およびキャリアコンサルタントが経験に対して適切な距離を取り、冷静に見つめることが出来ているのは後者ですね。
前者は、キャリアコンサルタントの中に生じたモヤモヤをダイレクトに相談者にぶつけてしまっているのです。ロジャースの「一致」のように見えますが、自己開示の仕方があからさまです。一方、後者は同じようなモヤモヤを感じつつも、感情をセーブしつつ伝え、結果として相談者に内省を促す問い掛けになっているのです。
「ものは言いよう」とはよく言ったものですね。非言語情報により、展開は全く変わってくるのです。左脳で捉えた言語情報… これを上手く伝え返すのは右脳。これはアート感覚と言っていいかもしれません。□
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