見える化できないと実行できないのか? ~見える化至上主義に注意せよ~

キャリアコンサルタントの部屋
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人的資本・人的資本経営という言葉が叫ばれるようになって数年が経ちました。下図はGoogle Trendsによる検索人気度のグラフです。伊藤レポート2.0が発行された、2022年5月から人気度は一気に増えており、この1年は落ち着いき、やや右肩下がりのようです。

それでは実際の企業において、その進展状況はどうなのでしょうか? 日本総研の調査によれば、有価証券報告書における人的資本関連指標の開示は前年より増加しています。特にダイバーシティ、人材育成、エンゲージメントに関する指標の開示が多いようですね。

従業員のキャリア形成に関しては、「従業員一人あたりの研修時間・費用」や「DX人材育成研修の受講者数」など育成に関する指標、「社内公募制度・FA制度の公募案件数」などスキル・経験に関する指標がそれにあたります。しかしながら、従業員一人ひとりが自律的・主体的なキャリアを歩めているか否かについては、その指標化が難しいと思われます。エンゲージメントスコアのうち、キャリアに関する満足度等で見るしかないのかもしれません。

さて、このような経営指標開示の重要性は言うまでもありません。1970年代、トヨタ生産方式(TPS)の中で使われ始めた「見える化」という言葉は、2000年代には経営分野で使われるようになり、一般名詞化しました。昨今のDX化によって、これまで見えなかったものも見えるようになってきているようですね。「見える化しなければ、カイゼンしようがない」という概念は、私のようなモノづくり企業出身者の脳みそに深く刻まれています。

私は前職において技術職から企画職に転身し、技術系社員を対象とした研修を企画する業務に携わりました。その際、繰り返し繰り返し上司から言われたのは、「研修の費用対効果を見える化せよ」ということでした。「皆、忙しく研究開発業務にあたっている。その時間を割いて研修に参加してもらうならば、費用対効果を見せないと参加を促せない」というのです。しかしながら研修の費用対効果など、容易に算出できるはずもありません。実施後、直ぐに数字に出来るのは「研修の満足度」くらいでした。私は自分が受講した際の感想を熱く語り、”情”だけで技術部門の管理者を説得していたのです。
実際、前述の有価証券報告書に記載されている指標も、研修時間・費用・受講者数といったものばかりで、費用対効果など算出できるものではありません。「本当に大切なものは見えない」のです。

人事戦略を実行する際、気を付けなければならないのは、「見える化出来ないからやらない、やれない、投資できない」という思考になることです。これだけは気を付けなければなりません。効果は見える化出来ないけれども、やってみる。後付けでもいいから効果を見せる…はアリですが、費用対効果が計れないから、やらない…はナシだと思うのです。

一介のキャリアコンサルタントとして言わせていただくならば、「キャリアコンサルタント有資格者によるキャリア面談の、受診者数や受診率、回数、時間」なども、経営指標として採り入れて欲しいと思います。何しろ、キャリアコンサルタントが国家資格化されても、有資格者による面談はほとんど増えていないのですから…(ココ) 経営者の皆さま、どうぞ宜しくお願い致します。□

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