1. ホーム
  2. キャリアコンサルタントの部屋
  3. 価値観を訊かずにどうやって選考するのか? ~うちに宗教があるか?~

キャリアコンサルタント養成講座にて、「採用選考においては、出身地や家族のこと等、訊いてはいけない」と教わりました。私は前職において、母校の研究室に出向く際、「君、出身は何処?」なんて気安く訊いていましたので、時代は変わったなあと思っておりました。しかし、そんな呑気なことを言ってはおられないようです。厚生労働省は「公正採用選考特設サイト」なるものを開設し、就職差別をなくすことを目指しています。

事業主向けのパンプレットには、”就職差別につながるおそれがある14事項”なるものが掲載されていますが、宗教や支持政党などに加え、「人生観・生活信条など」、「尊敬する人物」、「購読新聞・雑誌・愛読書など」も上がっています。これを見た瞬間、軽いめまいを覚えました。え”~これで、どうやって採用しろと言うのだと…

こんなこと言うと、キャリコン失格の烙印を押されそうです。ただ私はココでも書いたように、その人が会社において望ましい行動をとれるかどうか、その適正・能力があるかどうかは、行動の背景にある、考え方、感情、Self(価値観・倫理観)を訊かないと分からないと考えています。

面接の場面では、実際の行動を見る訳にはいきません。だからこそ「人生観・生活信条など」、「尊敬する人物」、「購読新聞・雑誌・愛読書など」の間接情報を用いて、価値観を探るのだと思うのです。
就職差別につながる”おそれがある”なので、採用担当者は求職者の了解をとりながら、問うていくのだと思います。しかし行動の背景にある思考、感情、価値観を聴いていく癖がついている私には正直無理そうです。会社の企業理念を示し、「このMission-VisionーValueに賛同できないのなら、入社してもらわなくて結構です」と言ってしまいそう(笑)。

私が危惧するのは、それが当たり前となって入社した若者が、日々の業務の中で上司から、

  • 「君は〇〇のような行動をしたけれど、どう考えてるの?」
  • 「そもそも、君はどんな価値観で仕事してるの?」

などと高圧的に言われたら、ショックを受けて辞めちゃうんじゃないか?ということです。

殴ったね? オヤジにもぶたれたことないのに... by アムロ

なんてシーンが浮かんでしまいます。離職率が高い昨今、上司は部下に辞められたら困るので、「君の価値観は問わない。けれど行動は変えてくれるかな?」となりますね。

河合隼雄先生のカウンセリングの本に「うちに宗教があるか」と題した下りがあります(カウンセリングを語る、角川ソフィア文庫、P.477)。カウンセラーを目指す方には、ぜひご一読いただきたいのですが、問題の子は「金で買えないものをくれたのか」と両親に吐き捨てるのです。これこそ価値観であり倫理観。子供は「理屈ではなく、ダメなものはダメ」という領域があることを、親にごまかして欲しくないのです。

「行動だけを問うて、価値観・倫理観は問わない」なんて言っていると、技術不正はなくならないし、企業理念の共有なんて出来ないと、私は思います。□

\ 気に入ったら、いいね&シェア下さい/