キャリアコンサルタント倫理綱領が改正されました ~改正のポイント~

キャリアコンサルタントの部屋
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私たちキャリアコンサルタントの基本的姿勢・態度や行動規範となる、倫理綱領が大幅に改定されました(R6/1/1付)。この手の改正については、その主旨が解説されていて然るべきかと思うのですが、残念ながらネットには載っていませんね… そこで、私なりに変更点を解釈してみました。改正点の理解にお役立ていただければ幸いです。なお検討のベースにした倫理綱領は、以下のものです。

  • 新綱領(令和6年1月1日付)→ ココ  本コラム中では、新版と呼びます。本文中の条項番号は、特に断りが無い場合、新版での番号を示します。
  • 旧綱領(平成28年4月1日付*)→ ココ  本コラム中、旧版と呼びます。

*本来なら、今回の改正直前の、平成29年8月1日版を比較対象とすべきですが、ネットに掲載されていないため、平成28年版と比較しました。

序文

旧版は平成27年の、国家資格化、登録制度の創設を受けた内容になっています。キャリアコンサルタントの登録者数が6万人を超えた新版では大幅に書き換えられていますね。「キャリアコンサルタントへの期待の更なる高まり」「責任の増大」「自己研鑽の必要性」など、旧版には無かった言葉が書かれています。「キャリコンとしての資質を上げなければならない」という業界団体の強い意志が反映されていますね。

前文

旧版にあった「キャリア形成上の問題・課題の解決」という言葉が無くなっていますね。キャリアコンサルタント実技試験の練習において、課題解決を急ぐあまり、キャリコン主導で話を進め、目の前の相談者や事例相談者を無視してしまうという声も良く聴きます。

1級技能士であり、発達心理学の専門家である石崎一記先生は、試験対策の危うさについて語っておられます(ココ)。解決すべきは表面的な事象ではなく、相談者の心の問題であり、自己概念の成長です。だからこそ問題・課題の解決という言葉を外したのでしょうね。新たに加えられた「向上心」という言葉も含め、私にはとてもしっくりきました。

第1章 基本的姿勢・態度

第1条:基本的理念

旧版の第3条(信頼の保持・醸成)に含まれていた2,3項が、本項に移動していますね。「多様性を重んじ」という言葉が新しく加えられています。

第4条:社会情勢の変化への対応

本項は新設されていますね。世の中の動きが速いので、「専門性の維持向上や深化に努めなければならない」と強く謳われています。簡単なテキストカウンセリングなら、AIで出来ちゃう時代ですからね(ココ)。生身の人間にしかできない専門能力とは何か? 改めて考える必要がありますね。

第5条:守秘義務

2項が新設されています。「プライバシーに配慮し、関連部門との連携を図る」が肝ですね。我々は、”キャリアコンサルタントとして専門性を超える案件についてはリファーする”と教えられていますが、それは単なる丸投げではなく、”関連部門と情報共有した上で連携する”ことです。その意味合いが明記されたのでしょう。

第6条:自己研鑽

全面的に書き換えられていますね。これは改正の主旨そのものだからでしょう。「自身の人間としての成長」「最新の情報技術の習得」によって資質を向上させることが強く求められています。なお旧版で謳われていた、「ネットワーク作り」は第8条に移動しています。

第7条:信用失墜及び不名誉行為の禁止

旧版で「誇示、誹謗・中傷の禁止」となっていた項が、増えています。「キャリアコンサルタント全体の信用を傷つけるような不名誉となる行為をしてはならない」とあります。心しておかねばなりません。

第2章 行動規範

第8条:任務の範囲・連携

「訓練を受けた範囲内でアセスメントの各手法を実施しなければならない」との文言が加えられていますね。安易にアセスメントを実施する方が居るのかもしれませんね。

第9条:説明責任

旧版から大幅に加筆修正されていますね。「書面や口頭で説明を行うこと」が明記されています。トラブルにならないようにするためにも、重要なことですね。また組織から依頼を受けてコンサルティングを行う場合について、契約書の締結や合意の必要性が述べられていますね。

3項は倫理的配慮。調査・研究を行うにあたっての倫理的配慮については、全ての学術研究領域において、重要視される時代ですね。

第11条:相談者との関係

2項において、「自らが所属する組織内でキャリアコンサルティングを行う場合」について加筆されていますね。現在、企業内でキャリアコンサルティングを行っている方が多くなっているためと思われます。

第12条:組織との関係

旧版11条の2項が統合され、1項に統合されていますね。

まとめ

今回の改正では急激な時代変化を受けて、多様性に配慮するとともに、自己研鑽を行って資質を向上させる必要性が強く謳われています。ホルダーの皆さん、改正の主旨をしっかり捉え、キャリアコンサルタントの社会的地位が向上するよう、努めてまいりましょう。□

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