本コラムでは、カウンセリングを受けるメリットについて、”相談者目線”で考える1と共に、私が対応できる領域についてお伝えします。
厚生労働省のホームページには、「カウンセリングを受けるメリット」が示されています。
- 話をしっかり聞いてもらえる
- 自分の考え方のくせや意外な長所に気づくことができる
- 今抱えている問題を整理できる
- 考え方を今の状況に適したものに切り換えられる
- 人とうまくつきあうための自分なりの方法を見つけられる
- 人として成長できる
出典:厚生労働省HP、「カウンセリングについて カウンセリングの概要やメリットとは」
これは心の診察、いわゆる”心理カウンセリング”について述べたものです。カウンセリングを受けてみようかな?という若者に「こんな効果があるので、ぜひ受けてみて下さい!」と背中を押すための文章です。
これを読んで、キャリコン有資格者、受験生の皆さん、どう思いますか? 私は「”キャリアカウンセリングを受けるメリット”と読み替えても、何の違和感も無いなあ…」と思いました。少ない実践例ではありますが、これを促すためにカウンセリングしていると言っても過言ではないのです。私はコーチングの初歩も学んでいますが、コーチングマインドともラップします。
では厚労省は「キャリアカウンセリングを受けるメリット」をどう定義しているのかと思って調べてみたのですが、厚生労働省の文章に「キャリア”カウンセリング”」なる文言は無いのですね。見事に「キャリアコンサルティング」で統一されています。国家資格化される際、統一化されたのでしょう。キャリアコンサルティングを行う人が「キャリアコンサルタント」であり、職業能力開発促進法に規定されています。「キャリアコンサルティング」とは、第二条5に以下のように定義されています。
「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいう」
では、「キャリアコンサルティング(キャリアに関する相談)の効果」についてはどうでしょうか? 以下の資料が見つかります。そう、キャリコン学科試験で頻出する、あの資料です。
出典:厚生労働省HP、「キャリアコンサルティングの活用・効果」
「心理カウンセリングのメリット」と同じように、”相談者目線”で読み替えるなら、以下のようになりますね。
- 仕事に対する意識を高めることができる
- 上司・部下との意思疎通を円滑にすることができる
- 自己啓発を行うきっかけにすることができる
- 自分の目指すべきキャリアを明確にすることができる
- 現在の会社で働き続ける意欲を高めることができる
- 適切な職業能力開発の方法を知ることができる
- 再就職につなげることができる
前述の心理カウンセリングのメリットと並べてみると、だいぶ具体的ですね。
さて今、私が目指しているところは、先の「心理カウンセリング」と「キャリアコンサルティング」を包括する領域であって、どちらかと言うと前者に重きを置きたいと考えています。なぜなら「キャリアコンサルティング」だけで食っていけるだけの知識・経験は明らかに不足していると自覚しているからです。私はキャリアコーチングと称される領域のお仕事を得ようと面接試験を受けましたが、面接官には…
「貴方は、”答えは相談者の中にある”と考えているようだが甘い。それでは転職希望の相談者からお金はいただけない。貴方のような経歴の人は別の仕事をした方が良い。」
と”お叱り”を受けて、即不採用となりました(笑)。「キャリアコンサルティング」の領域、特に再就職・転職の視点で実践的なアドバイスが出来る経験がないのです。その経験を積もうと思ったら、今から転職エージェントに再就職するしかないと思いますが、その気は全く無いのです。
一方、心理カウンセリング領域に踏み込んでいこうとすると、別の声が聞こえてきます。
「お前はキャリアコンサルタントであって、心理カウンセリングは担当外。倫理綱領に基づいて直ちにリファーせよ!」
この背景には「心理カウンセリング=医療行為」という捉え方があると思います。しかしながら、公認心理士であり、カウンセリングルームを開設する竹内成彦先生は、心の病は大きく6つに分類され、主要な3つの症状については、以下のような所に行くのが良いと言っておられます(YouTube)。
- ノイローゼ : 悩みやストレスから生じる心の病 → カウンセリングを受ける
- 心身症 : 悩みやストレスから、眠れないなどの身心の症状が出る場合 → 心療内科を受診する
- 精神病 : 自覚症状のない心の病 → 精神科・神経科を受診する
「ノイローゼの方が8割位いるので、ぜひカウンセリングにお越しください!」という訳です。
私は心身症、精神病は扱えません。しかし心理相談員(中災防)ではあるので、ノイローゼの方のお役には立てないかと考えているのです。こんな考えでは、甘いですかね? イメージ図で示すと以下のようになります。
この図で、◎、〇を付けた項目は私の得意項目であり、カウンセラーとして特に大事にしているところ、△はちょっと自信ない項目です。「人としての成長」を促したいですが、得意だと言えるほどの実績はありません。但し「話を徹底的に聴くこと」は強く意識していますし、「相談者の長所」を言語化することは得意です。また「問題点の整理」には自信があり、◎としました。「問題解決」というとカウンセリング分野では嫌がられる言葉ですが、それは「上っ面の問題解決」であって、「本質的な問題解決」はカウンセリングに必須だと私は考えています。企業の技術者出身ですので、問題点を整理することは得意なのです。
一方、「キャリアコンサルティング」領域では、「意思疎通を円滑化すること」に長けています。上司や部下とのコミュニケーションに悩む方に対し、「こんな風に関わったらいいのでは?」と、具体的に提案できます。これはロープレ勉強会で沢山のフィードバックが活きていると認識しています。「仕事に対する意識を高めること」については前職での風土改革の経験から、〇。「自己啓発」や「目指すべきキャリア」については、マインドフルネスや仏教などスピリチュアルな点からお示しできますので、〇。「再就職や転職」については先のエピソードでも述べた通り、△です。
キャリアコンサルタントにも、得意不得意の濃淡があると思います。それを開示することは、相談者の方に選んでもらうために必要なことだと、私は考えております。□
- 日本キャリア開発協会(JCDA)は「CDAにおけるキャリアカウンセリング」を以下のように定義しています。「キャリアカウンセリングとは、発達的視点に立って、成長と適応という個人の積極的側面に強調点を置き、個人が環境の中で効果的かつ自律的に機能できるように支援すること。自己概念の開発を通してキャリア形成を図ること。出典:日本キャリア開発協会、「キャリアカウンセリングとは何か(改訂版)」、P.4 」但し、この定義はCDA(Career Development Adviser)に向けて、その在り方を説いたものです。相談者の人に「キャリアカウンセリングを受けたら、貴方の自己概念が成長します」と言っても伝わらないと思いますので、このコラムでは触れません。 ↩︎
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