カウンセリングのすすめ(21)~キャリア面談をめぐる上司/部下の言い分~

カウンセリングのすすめ
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先のコラムにおいては、1on1における上司/部下の言い分について考えてみました。上司も部下も「ちゃんと聴いてもらったという体験」をしてこなかったので、実施する意味を感じられないのだと、私は思います。「会社がやれ言ったから、とりあえずやる」のでは、誰も幸せになりません。

さて、1on1にも増して難しいと言われるのがキャリア面談。「キャリアについて話せ!」とテーマは決まっているものの、とてもデリケートな話ですから、どう話していいのか分からない方がとても多い。面談の仕方について事前に研修を実施する企業もあるようですが、その程度は様々で、上司の不安を払拭するものではないようです。そこで今回は、キャリア面談をめぐる上司/部下の言い分について考えてみましょう。

まず上司側ですが、「自分のキャリアは自分で考え、切り拓くべきだ」と考えておられる方がとても多い。「キャリアを自律的に考える」ことはとても重要。他人任せにしないことが最も重要なのです。但しこれは「誰にも相談せず、自ら考え、自らの力だけで切り拓け!」という訳ではありません。「会社でキャリアのことを相談しなくても良い」という訳ではありません。

誤解を恐れず言えば、役員、部長など、社内で出世した方ほど「自分のキャリアは自分で切り拓いてきた」という自負をお持ちのように思います。だから「出世したけりゃ、努力しろ!」と突き放す… しかし「自分が出世できたのは、あの人に導かれたからだ」「あの人のあの一言で自分のキャリアは一変した!」と語る方もおられます。端から見ているとスゴイ努力をされてきた方こそ、そうおっしゃるのです。

「キャリア」という言葉が意味するものも大きく変わりました。高度成長期は社会の波に乗って脇目も振らず突き進めば良く、その努力の先には昇進がありました。「キャリア=昇進」の時代です。但し現代高度成長の負の側面に目を向けざるを得ない時代。昇進してマネージャーになることは、ご褒美でも何でもなく、罰ゲームと言われる時代です。若者にとっては「キャリア=自分らしい働き方の選択」といった捉え方が一般化しています。そういった背景があってのキャリア面談なのです。

さて、そのような背景を受容れた上司にとっても「じゃあ、具体的にどう行えばいいんだ?」という問題が起こります。罰ゲーム化した管理職。自らのキャリアも描けない中「部下のキャリアを約束する」なんて出来ないし、聴いてしまったら叶えられるように支援しなくてはならない… 「言ったもん勝ち、聴いたもん負け」です。「そもそも自分は会社の意向に沿って異動も転勤も受容れてきた… なのに、”自分らしさ”という言葉で、わがまま言うなよ…」、「やりたいことや夢を語ったところで、どうするんだ?」 ――― そりゃあ、そうなりますよね。

一方、部下はどうか?と言えば、概して優秀な部下ほどキャリアを自分事と捉えており、転職や副業、独立など、色々な選択肢を考えています。「会社にどうにかして欲しい」などとは考えていない。私の世代が若い頃は、「会社に対するロイヤルティ(Loyalty)=忠誠心」が問われましたが、今や死語。特に就職氷河期世代の方は、その傾向が強いのではないでしょうか?

自立・自律の意志が強い方がいる一方で、「静かなる退職」という言葉に代表されるように、無気力な方が居るのも事実… このような人にとって、「会社で、やりたいことや夢は何?」と問われることは苦痛ですよね(”WILLハラスメント”なる言葉もあるようですね)。 中間層の方はどうかと言えば、「世間では自律的なキャリアが問われているが、自分では何をしていいか分からないし、会社も何をしてくれるのだろう?」という人たち。総じて部下の側も、キャリア面談を望んではいない…ということになります。


このようにキャリア面談は「お互いに実施する意義を感じられないもの」になっている…と私は思います。しかし「実際に話してみたら、普段は聴けない部下の仕事観が分かって、有意義な場になった」、「思い切って自分の夢を話したら、具体的なアドバイスももらえたし、何よりスッキリした!」なんて話もあるんです。明らかに職場が良い方向に動いた! ――― そうなんです。本来、その為のキャリア面談なのです。

「やって良かった!」と思われるキャリア面談をどう増やすか? 私は以下の2点が重要だと考えています。

  • 上司が、基本的な傾聴スキルを学ぶ
  • 上司が、自分自身のキャリアを通して、基本的なキャリアの考え方を学ぶ

「罰ゲーム」ではなく、相互に有意義な場とするためには、上司が変わることが必要です。前者は先のコラムで書いたように「聴いてもらう嬉しさ」を自ら体験することです。それが腹落ちすれば、他者に対しても同じことが出来ます。後者は上司側の苦手意識を解消するためにとても重要。自分事として考えたことであれば、部下の考えを余裕を持って聴くことができるでしょう。自らの古いキャリア観をアップデートすることは、とても重要なのです。

そんな上司の皆さん、当ライフキャリア相談室で、キャリア面談しませんか? 「社外の奴に何が分かるんだ!?」という見方もあるかと思いますが、貴方のことを良く知らない部外者だからこそ、一緒に向き合える問題があると思うのです。お気軽にお問合せ下さい。□


~ ”カウンセリングのすすめ” シリーズ ~

  1. どんな効果が期待できるのか?
  2. 私の得意不得意
  3. 身体の不具合が出る前に
  4. 自分を大切にし、センサの感度を上げる
  5. 社内でキャリコンによる面談が受けられない場合
  6. 聴いてもらう嬉しさを知ろう
  7. 就職・転職とは関係なくてもいいんです
  8. オンラインカウンセリングの良さとは
  9. 一般的なコンサルティングとの違い
  10. 中高年の技術系社員の悩み
  11. 相談者の自己受容をお手伝い
  12. 何に悩んでいるか説明できない
  13. セカンドキャリアの考え方
  14. 技術系専門職の皆さまへ
  15. 同じような悩みを持っている人はたくさん居る
  16. 組織を対象としたカウンセリング
  17. 1on1の練習をしませんか?
  18. モノづくり企業のミドルシニアの皆さまへ
  19. 社外で壁打ちしましょう
  20. 1on1をめぐる上司/部下の言い分
  21. キャリア面談をめぐる上司/部下の言い分 (本投稿)

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