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  3. 「~しかない」への違和感 ~私は何処に行った?~

最近、よく耳にする言葉に「~しかない」(または「~でしかない」)があります。

  • 「感謝しかない」:従来で言うところの「深く感謝致します」を意味しているようです
  • 「不安しかない」:猛烈に不安な様子を言っているようです
  • 「楽しみしかない」:とても楽しいようです

スポーツ選手のインタビューの場面等で良く耳にします。Veryの意味で使われているようですが、私には違和感があるんですよね.. あえて言葉にするなら、「いくつかの感情(上記で言えば感謝、不安、楽しみ)があるだろうに、All or Nothing で語っているような気がするから」です。思わず「そんな単純じゃあないだろう?」と突っ込みたくなってしまうんですよね。

人間の脳は「良いか悪いか」、「AかBか?」の判断を常に繰返していると言います。スッキリするんですよね。どちらかに寄せちゃうと… でも、そんな単純なものでしょうか?

また、従来の「~しかない」には、「今の状況では、これ以外に方法、選択肢がない」という「仕方がない」、「しょうがない」という思いがあります。このニュアンスならば…

  • 「感謝しかない」→「今の状況では、仕方がないけれど、感謝します」
  • 「不安しかない」→「今の状況では、仕方がないけれど、不安です」
  • 「楽しみしかない」→「今の状況では、仕方がないけれど、楽しいです」

となります。おやおや、何だかおかしな空気が漂ってきますね。

私にはもう一つ、気になることがあります。

  • 「感謝しかない」≠「私は~にとても感謝しています」
  • 「不安しかない」≠「私は~にとても不安を感じています」
  • 「楽しみしかない」≠「私は~がとても楽しみです」

「~しかない」は状況を説明していますが、私という主語が無いんです。目的語も不明確です。それ故、”柔らかい表現”として好まれるのかもしれません。しかし、主語が無いことに私は違和感を感じるのです。人は言葉で思考します。主語がない言葉で思考を繰り返すうち、主体性が失われていくのではないか?と私は思うのです。

キャリアカウンセリングの場面においても、主語を曖昧にしてお話しする方は結構おられます。状況は語られるのですが「私は~と感じている」とは、なかなかおっしゃらない。たぶん、会社での業務において、状況を説明することに慣れていて、「私は~と思う」なんて言う場面は少ないのだと思います。後者は私情を挟むと嫌われ、みっともないことなのです。

「私は~と思う」いわゆる ”I”メッセージで語られたとき、初めて感情が語られ、カウンセリングが進展するのです。なぜなら、カウンセリングは状況の解決でなく、本質的な心のモヤモヤを解くものだからです。流行りの”柔らかい表現”もいいですが、主語を意識しながら発言すると多くの事象は自分事となり、悩みは少なくなる… 私はそのように考えています。□

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