「意味の出現」を促す質問は難しい

キャリアコンサルタントの部屋
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キャリアカウンセリングにおける「経験代謝」。国家資格キャリアコンサルタント試験をJCDA(日本キャリア開発協会)で受験するならば、この理解は必須です。実技試験(論述および面接)は、「経験代謝を理解できているのか?」を問うものであると言えるでしょう。

①経験の再現~②意味の出現~③意味の実現の3つのフェーズを理解していることが肝要です。(受験生の皆さんは、以下の本で勉強しましょう)

※無料で入手できる冊子もあります。

立野 了嗣、キャリアカウンセラーのためのスーパービジョン―経験代謝理論によるカウンセリング実践ガイド、金剛出版

来談目的として発せられた言葉の背景には、「経験」があります。「何があったんですか?」と問い、「経験の再現」を促します。いつどこで、誰と、どんな話をしたのか? 出来事を聞き、「その時、何を感じたか?」感情を問います。

喩えるならば、コンサルタントはじっと目を閉じ、相談者が見ている映画のワンシーンをありありと語ってもらう… 分かったような気にならず、好意的な関心をもって相談者の話に耳を傾ければよいのです。

難しいのは、ここからです。経験を再現する際、独特な表現、オヤッと思う言葉があります。そのシーンを皮肉っぽく語ってみたり、登場人物に対する激しい憎悪が見え隠れすることがあります。しかし、折角語られた「自己概念の影」を逃してしまうことがあります。

私もロープレの勉強を始めたばかりの頃は、何度も何度も、この影をスルーしてしまいました。相談者が独特な言葉を発しているのに、それを受け止められず、出来事を問うために次の質問をしてしまうのです。スポーツで喩えるならば、バッターボックスに立っているのに絶好球を見逃し。しかも見逃したことにも気付かないのです。

なぜでしょうか? いくつかパターンがあるかと思います。私の場合を思い起こしてみると…

  1. 「感情を聴くことが大事」と思いつつも、普段の会社業務では感情を交えずに事実関係を確認する習慣が染みついている。相談者の感情、表情や言葉のニュアンスに無頓着である。
  2. 状況証拠を集めることに必死になり、感情が現れている言葉に気付かない。問題解決をするには、経験の5W1H全てを聞かねばならないと思い込んでいる。
  3. 相談者から発せられた感情の言葉に、自分自身も納得してしまい、それ以上続かない。例えば「そのとき、もう嫌だ~って思ったんですよね」と言われ、(そうだよな、そんな状況になれば、誰でも嫌だよな…)などと納得してしまう。

結果として、①経験の再現までしかできず、②意味の出現までいかないのです。②が分からないと「相談者のありたい姿」が見えないので、主訴は明らかになりませんよね… 論述試験の逐語録では①→②と一直線に進んでいきますが、15分のロープレでは①で終わってしまうことも少ないですよね。そんなときの口頭試問では「まだ意味の出現にまで至っていないので主訴は明らかでありません。」と答えられれば良いと、私は思います。

「意味の出現」を促せるか否か? は大きなハードルかと思いますが、このプロセスを踏まずに「意味の実現」はありえません。相談者の中に何が起こっているのか? そしてキャリアコンサルタントの心の内側に何が起こっているのか? 外にも内にもマインドフル(気付きに満ちた状態)でなければなりません。たぶん、そう在るためには一生修行なんだろうなあ…と思います。共に頑張りましょう。□

※ 論述過去問こそが、とても分かりやすい事例です ↓↓↓ 

経験代謝を含む、カウンセリングの考え方については、本ブログのコラム138本をまとめて本にしました。再編集・再構成して読みやすくなっていますので、ぜひご一読下さい。→ココ

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