大学に10年も行き、技術系研究者を目指していた私が、何故キャリアコンサルタントという対人支援職を志すことになったのか、ここではその経緯についてお伝えし、詳細プロフィールに代えさせていただきます。
私は寺の次男坊として生まれました。幼少の頃は大変な問題児。幼稚園の頃は毎日登園拒否、小学校では毎日のように廊下に立たされていました。直ぐにキレる子であり、周りの大人は大変苦労したと思います。住職であった父とは最も気が合わなかったため、高校卒業とともに「合法的家出」をすることになります。自分の意志で家を出たなどと言えば格好いいですが、親のすねをかじって、研究者修行をしておりました。
とにもかくにも理屈に合わないことは嫌い。「研究者には論理的思考が最も重要!」と言いながら、「”知”で他人を動かそう」としていました。しかし、後に就職することになる企業との研究開発は難航し、気管支喘息で1カ月入院する羽目に。同時にメンタルもやられていました。しかし、この頃の私は典型的な「他人に相談できないタイプ」。何でもかんでも自分で決めることをヨシとしていました。この頃の出来事は、今でも悪夢となって私を苦しめています。
さて、それでも何とか博士課程を修了。自動車部品会社の研究職に就くことになり、念願だった新たな装置の開発に取組みました。結婚し、2人の子供にも恵まれ、充実した生活を送っていました。そんな折、労働組合の活動に従事するようになります。「将来管理職になる人は労組役員をやるのが当然」だったからです。しかしその後、会社が合併することになり、労働組合にも統合が求められます。新会社の人事制度、組合のしくみをめぐり議論は白熱。製造現場を巡り、「他人の話を聴き、”情”を動かすこと」に尽力しました。但し二足のわらじを履きこなせるほどの器用さは持ち合わせていなかったため、技術者としての本業はすっかり疎かになってしまいました。
その後、組合は統合されましたが、技術者としては大成できず、管理職にもなれず、技術企画職に転身することになります。当初、”企画なんて浮ついた仕事だ!”とバカにしていたのですが、意外や意外、この職の面白さに目覚め、MOTを学びながら「社会の”意”を汲んで仕事をすること」に夢中になりました。練りに練った自分の思いが、経営層に届くことに喜びを感じていました。研究部門の風土改革にも取組み、組織としての方向性を明確化していくことに大いなるやりがいを感じていたのです。
但し、数百人も居る組織の風土は、容易には変わりません。効率とコンプライアンスが重視される企業風土の中、新たなイノベーションを生み出すには、技術者一人ひとりの倫理観、幸福観に問い掛ける必要が生じたのです。「技術者にとっての Well-being とは何か?」を考え始めたのは、この頃です。
Well-being(今ここをよく生きる)には多様な要素がありますが、その大きな要素としてキャリアがあります。ライフキャリアと呼ぶべきもので、仕事だけでなく、家庭や趣味、地域活動など、人生全体で果たす役割や積み重ねを示します。そんな流れの中、私はキャリアコンサルタントという資格に巡り合いました。養成講座を受講し、ロープレ勉強会への参加を繰り返して、2022年1月に資格を取得できたのです。
そんな私のキャリアをまとめると、以下のようになります。
- 「”知”で他人を動かそう」という技術系研究者が、
- 「他人の話を聴いて、”情”を動かす」組合役員を務めることになり、
- 「社会の”意”を汲んで仕事をする」企画職にたどり着いた。
- イノベーションを生み出すには、「技術者にとっての Well-being とは何か?」を考える必要性に迫られ、
- その要素としての、ライフキャリアに行き着き、キャリアコンサルタントという対人支援職を志すことになった。
しかしながら、その歩みは決して平たんな道のりではありませんでした。キャリコンには有名な「ホランドのワークタスクディメンジョン」。ここで対抗する職種に転身するのは容易ではないのです(下図)。モノづくりの研究者がキャリアコンサルタントを目指そうなんて、「適さない」と言っても過言ではないのです。
その過程については、拙著「Well-beingなキャリアとは何か?」にまとめました。
本書をまとめる中で気付いたことは、「Well-beingなライフキャリアとは、自身のこころの各階層(知情意)を自由に行き来しながら、主体性を持って活き活きと生きること」です。
しかし、これは簡単なことではありません。“こころ”はコロコロしていて不安定。漢字で書いても、まとまりがありません。至る所に壁があり、何かに捉われて、人は悩むのです。だからこそ、悩みを聴かせて欲しい。そんな思いで、私はこの道を選びました。
エラソーに志を語ってしまいましたが、そんな私が何とかしたいのは「他人に相談することをヨシとせず、独りで悶々と悩み続けた、学生時代の自分」なのかもしれません。相談下手な方、ぜひお越しください。また、技術者の育成でお悩みの人事担当者、技術企画担当者の方、ぜひお声がけ下さい。少なからずお力になれると思います。宜しくお願い致します。□
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