受容・共感・一致だけでは上手くいかないとき ~クライエントは何処に手を当てていますか?~

キャリアコンサルタントの部屋
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「カウンセリングが上手くいかない。クライエントに気付きの瞬間が訪れない… その理由はカウンセラーである私の技能不足にある」と思い込んでいませんか? もちろん、カウンセラーの技能が未熟なために、上手くいかないということもあるでしょう。しかし、カウンセリングはクライエントとカウンセラーの共同作業によって作られるものです。カウンセラーの技能が高いことでクライエントに気付きが起きれば、それは素晴らしいこと。逆にカウンセラーの技能が低くとも、クライエントの内省力が高く、”勝手に”気付きが起きることもあるのです。

どれだけ受容・共感・一致しても、上手くいかない場合があり、その理由について調べたジェンドリンは、あることに気付きます。上手くいかないクライアントは以下のような「話し方」をしていたそうです(諸富祥彦、カウンセリングの理論(上)、誠信書房、P.156)。

  • 猛スピードでまくしたてる。
  • さまざまな事柄について説明し続ける。
  • 自分自身について、知的な分析をし続ける。(アナリスト・タイプ)
  • 自分の人生の物語を、間断なく語り続ける(ストーリーテラー・タイプ)
  • 「悲しい」「頭にきた!」などと「感情を爆発させる」。「悲しみ温泉」にどっぷり浸かって語り続ける。そうかと思えば、いきなりキレて、怒りをぶちまける。(激情タイプ)

反対に上手くいく場合、クライエントは身体の何処かに手を当てて、その感覚を確かめるような動作をしたり、突然、沈黙したりするのです。これこそフォーカシングで言うところの、フェルトセンス。問題に関して身体が感じる違和感に注意を向けている状態であり、カウンセラーからの言葉を身体の中で響かせているのです。

明治大学の齋藤 孝 先生は、”知”を感じるときは額に手を当て、”情”を感じるときは胸を、”意”を感じるときは丹田(へその下)に手を当てることを推奨されています(齋藤孝、渋沢栄一と論語と算盤、フォレスト出版、P.98)。

これをカウンセリングに当てはめれば、「頭を抱えて悩んでいるとき」は理屈が破綻しているとき。「分かっちゃいるけどモヤモヤする」から相談に来たのです。カウンセリングによって経験が再現され、感情が呼び起こされれば、それは言葉となって表現されるでしょう。言葉にならない部分は、胸に手を当てながら「なんと言うか… その… 胸がぎゅっと苦しくなるような…」などと、ゼスチャーを伴いながら表現されるでしょう。

猛スピードで自分の事をまくし立てる人の手は、大きく開かれ、こちらに向けられていますね。頭でっかちで分析をする人は、立てた指がこめかみに当てられています。腕を組みながら評論している人は、感情を見せないようにしているのです。

「受容・共感・一致したのだけれど、どうしても上手くいかない」という場合、相談者の手の表情に注目すると良いと、私は思います。そして「体感覚を探るようなしぐさ」が一切見られない人については、”カウンセリングは効かない”ので諦めましょう。諦めるとは”明らかに見る”ことです。恥ずかしいことではありません。□

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