―― ”ひとりで抱える” を手放すために
はじめに
技術者でも管理職でも、責任ある立場にいるほど
「自分で何とかしなきゃ」
「弱みを見せるのは避けたい」
と、悩みを抱え込みがちです。
しかし、人は誰しも “ひとりで処理できない感情” を抱える瞬間があります。
そんなときに支えになるのが、「聴いてもらう」という体験 です。
私自身も、“抱え込む側”の人間だった
正直に言うと、私は長い間、
無駄にプライドが高いタイプ の技術者でした。
自分で分析し
自分で対処法を考え
感情も問題も、すべて“自家処理”しようとしていました。
しかし、どれだけ分析しても現実は変わらず、
むしろ状況は悪化していきました。
そして限界が来たとき、
その行き場を失ったエネルギーは
上司や組織への不満として噴き出す ようになりました。
当然ですが、
不満ばかり言う人間が評価されることはありません。
私は徐々に孤立し、苦しいループに陥っていきました。
転機は、“異業種交流会”での出会い
そんなとき救いになったのは、
特定の誰かではなく、
異業種交流会で出会った人たち でした。
驚いたことに、まったく違う職種の人たちが
私と同じような悩みを抱えていたのです。
「自分だけじゃなかったんだ…」
その安心感が、
不満ではなく 前に向かうエネルギー を生み、
少しずつ状態が変わっていきました。
さらに大きな変化をくれたのは「キャリアコンサルタント養成講座」
養成講座での学びを通して、私は初めて
- 自分の思考のクセ
- 人への聴き方の偏り
- 伝え方の問題点
に気づきました。
今ならはっきり分かります。
あの頃の私の説明の仕方、聴き方、態度では、人は動かない。
しかし、当時の私は気づいていませんでした。
むしろ「自分は正しい」と思い込んでいたのです。
この気づきは、人生の大きな転換点となりました。
聴いてもらうと、人は“整理できる”
悩みは、
話すことで初めて輪郭が見える ことが少なくありません。
頭の中で考えているだけでは
同じ場所をぐるぐる回り、
出口が見えなくなります。
しかし、誰かに聴いてもらい、安心して言葉にした瞬間、
思考は一気にシンプルになります。
これは感情論ではなく、
技術者のあなたなら分かる通り、
「外部I/Oを通すとシステムの状態が整理される」 のと同じ原理です。
“孤独なマネージャー”こそ、聴いてもらう必要がある
YeLLで多くの管理職の方と関わるなかで、
共通のパターンが見えてきました。
それは、
「部下の相談には乗るが、自分の相談相手がいない」
という構造です。
責任ある立場になるほど、
弱音を吐ける場所がなくなります。
しかし、聴いてもらえる場所を持つ人と、
抱え込む人では、
意思決定の質も、健康度も、キャリアの伸び方も違う と感じています。
技術者にも、管理職にも、あなたにも
“聴いてもらう場所”は必要です
聴くプロであるキャリアコンサルタントは、
あなたの話を評価しません。
否定もしません。
結論を急かしません。
ただ、あなたの言葉を丁寧に受け取り、
必要なときには思考の整理を手伝い、
視点を整えるお手伝いをします。
悩みを抱えるのは弱さではなく、
ひとりで抱え込むこと が心身を摩耗させてしまいます。
あなたが “話しても大丈夫な場所” を一つ持つことで、
キャリアの質は大きく変わっていきます。
さて、「聴いてもらう」ことに価値があると感じても、
それが一般的なコンサルや助言とどう違うのか、
いまひとつ分かりにくいかもしれません。
その違いを知る前に、
「誰にも評価されずに話せた経験」があるかどうかで、
受け取り方は大きく変わるのかもしれません。
👉 キャリアコンサルティングと“普通のコンサル”は何が違うのか?
まとめ
- 人はひとりでは整理できない悩みがある
- 聴いてもらうことで、思考が整理され、前に進める
- 異業種の視点や安全な対話は、大きな力になる
- 自分のクセに気づくことが、変化の第一歩
- 管理職・技術者こそ、聴いてもらえる場所が必要
一人で考えることに限界を感じたとき、
思考や感情を、評価されずに言葉にできる「場」があることを、
どこかで覚えておいてください。
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